ブリヂストンが過去最多の35チームに供給。サステナブル素材比率63%へと大幅アップ
ソーラーカーレースで世界最高峰のBridgestone World Solar Challenge(ブリヂストン・ワールド・ソーラー・チャレンジ、以下BWSC)は10月下旬に開催される。BWSCは2年に1度、オーストラリアのダーウィンからアデレードまで、砂漠地帯を含む3000キロを、約5日かけて走破するという過酷なレース。ブリヂストンは2013年からタイトルスポンサーを務め2031年大会までサポートすることを表明している。同社は8月29日、BWSC2023大会に「ENLITEN」(エンライトン)技術搭載のタイヤをモータースポーツに初めて投入すると発表した。
ブリヂストンは小平市のブリヂストン・イノベーション・パークで「ブリヂストン・ソーラーカー・サミット 2023」を開催。第1部で近年のソーラーカーの動向と、BWSCの位置づけ・意義について説明し、第2部は東海大学の主催によりBWSC参戦体制を発表した。
BWSCは「太陽光を動力源として使用するソーラーカーの技術的な革新と若手エンジニアの育成」を開催目的として掲げる。空気力学と電気工学、電子工学などさまざまな科学分野の知識とハイレベルな技術が求められるレースである。
同社はBWSC2023大会のチャレンジャークラスに参加する全32チーム中25チームに、クルーザークラス全11チーム中10チームに、それぞれ「ENLITEN」搭載のタイヤを供給する予定で、過去最多となる。
同サミットで、ブリヂストンのモータースポーツ部門長である堀尾直孝氏は「当社はタイトルスポンサーとして、極限への挑戦を通じて未来のモビリティ人材を育て、次世代の革新技術を生み出す『オープンプラットフォーム』と位置づけている。ソーラーカーレースは走行中のCO2排出量がゼロで、太陽光さえあれば永久的に走行可能であり、その潜在能力は評価が高まっている。
サステナブルなモータースポーツを支えるべく、環境性能と運動性能を高次元で両立する次世代の革新技術開発を進めることで、持続可能なモビリティ社会の実現を支える。さらにこの挑戦を通じ、モータースポーツ文化の発展を支え貢献していきたい」と挨拶した。
また、同部門MSタイヤ設計第1課の木林由和氏が今回モータスポーツで初めて搭載する「ENLITEN」について解説。木林氏は「BWSCでは、限られた電力で長距離を走りきる低電費性能と、レースを走りきることができる耐久性能がタイヤ性能に必要とされる」とし、「ENLITEN」技術によりBWSC用タイヤをカスタマイズ。「低転がり抵抗・耐摩耗性能・軽量化に特化し、エッジを効かせる」「再生資源・再生可能資源使用比率(MCN比率)のアップを図った」という。
このタイヤには再生スチールや再生有機繊維適用補強材などの再生資源・再生可能資源を使用。またクルーザークラスタイヤではもみ殻由来シリカ、タイヤ熱分解油由来カーボンブラックを使用した。この結果、前回大会のタイヤがMCN比率30%だったのに対し、23年大会は63%へと大幅向上し、サステナビリティへの貢献を実現。
さらに、低炭素なタイヤ輸送も積極的に行い、バリューチェーン全体でサステナブルなモータースポーツを支える取り組みとした。
BWSCは10月22日から29日に行われ(予選は21日)、23の国と地域から43チームがエントリー。日本からは東海大学・工学院大学・和歌山大学・呉港高校が参加し、4チームとも大陸縦断のタイムを競う戦いのチャレンジャー・クラスで出場する。