走行中給電の実証実験を開始  東大とブリヂストンなど産学官の共同研究グループが独自技術でEV普及に

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カテゴリー: ニュース
左から、大崎博之東京大学大学院教授、藤本博志東京大学大学院教授、太田和美柏市市長、藤井和久国土交通省関東地方整備局千葉国道事務所所長
左から、大崎博之東京大学大学院教授、藤本博志東京大学大学院教授、太田和美柏市市長、藤井和久国土交通省関東地方整備局千葉国道事務所所長

 東京大学大学院やブリヂストンなど20社以上が加盟する共同研究グループは3日、千葉県柏市内で国内初となる走行中給電の公道実証実験の出発式を行った。

 走行中給電とは、道路に埋設した送電コイルより、走行中および停車中の電気自動車(EV)の電池へ自動的にワイヤレス給電する技術である。ワイヤレス給電とはスマホの「置くだけ充電」と同じ原理を使い、非接触で受電する仕組み。バッテリーの小型化や充電時間の短縮などを可能とした。

 2015年12月、COP21で採択されたパリ協定を受け、日本でも2020年10月に政府は「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、カーボンニュートラルを目指す」ことを宣言した。自動車の電動(EV)化は、日本のみならず世界的な潮流になっている。だが、その普及には給電や緊急充電のためのインフラ面をはじめとした課題が多く残る。

受電コイル
受電コイル

 EVの充電器による充電はガソリン車の給油と異なり1回当たりに相当の時間を要すること、また1回の充電で走行可能な距離も一般的にはガソリン車に比べて短く、より高い頻度での充電が必要だと指摘される。

 走行中給電の実用化はこれら喫緊の課題解消に向け大きく前進する。さらに、前出のほかにも「車体が軽くなり、走るために必要なエネルギーが減る」「車両コストが下がる」「充電設備が集中しないため、電気系統への負荷が平準化される」「充電器用の敷地、電気を個人で用意する必要がない」など、メリット創出への期待がかかる。

送電コイル一体型路面
送電コイル一体型路面

 本実証実験で使用する送電コイルは東大グループが設計を行い、10秒充電することで一般的なEVが1km走行することが可能となる仕様だという。路面に設置する送電コイルは、車体が止まっている時間が比較的長い信号手前に埋設し、その近くの歩道にブレーカーとインバータも設置する。

ブレーカー(左)とインバータ
ブレーカー(左)とインバータ

 出発式で藤本博志教授は、「走りながらEVに給電をする技術は柏キャンパスに移転してきた10年以上前に基礎研究を始めた。車体の中央に設置するのではなく、車輪のすぐ横2カ所にコイルを付けているのがとくに独自性の高い技術。しかしまだスタートラインにすぎない。実証が始まってからが大事」と語った。

 ブリヂストンは今回の共同研究でタイヤ近くに配置された受電コイルがどのように影響するのか確認していく。また同社は、「JAPAN MOBILITY SHOW 2023」で今回の実証実験に関連する取り組みと技術を出展する予定。


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