物流問題の解決は変化に対応する技術で
「100年に一度の大変革期」といわれる自動車産業。MaaSやCASE、カーボンニュートラルと脱炭素社会など新しいキーワードが次々に生まれ、価値観の多様化が進む現在、自動車とその関連業界には社会の変化に対応した技術開発が期待される。トラック・バスが支える運送業界は物流2024年問題も目前に迫り、ドライバー不足という喫緊の課題をはじめ、様々な問題解決に取り組んでいる。普及が見込まれるEV、自動運転など、従来とは違う運送のあり方について、その運営や問題点が議論されている。トラック・バス業界の最新状況を追った。
日本自動車輸送技術協会(JATA)は2日、「第28回トラック・バスの新技術セミナー」を開催した=写真上=。公益財団法人であるJATAは自動車の使用・整備に関する技術・開発の調査研究等を行っており、今回は4年ぶりのリアルでの開催。
会長の内藤政彦氏=写真下=は開会にあたり、「自動車運送事業はわが国の社会・経済の基盤となる極めて重要な役割を担っていることは言うまでもないが、最近はさまざまな課題を抱えている。安全運転支援システムや自動走行システムの開発による安全性向上や物流システムの高度化が求められている。このような時期にこそ、技術開発・普及対策を推進し、情報共有が必要」と述べ、今後の業務への反映、活用への期待をみせた。会場の全日本トラック総合会館のホールは100名超の会員で満席となり、講演に熱心に耳を傾けた。
そのなかで「トラック業界は生産性が低く稼げない。平均積載率は4割弱。売上も上がらず賃金も上がらない。根本的に何とかしないと日本の物流の問題は解決できない」と、熱弁をふるったのはNEXT Logistics Japan代表取締役CEOの梅村幸生氏。同社は「経済・社会を支える物流を止めない」ことを最終目的とし、積載率を高める荷物の組み合わせを考えるシステム「NeLOSS」を開発。関東・関西間の輸送で実用化している。
梅村氏は「物流2024年問題など社会課題解決に向けた共創の取り組み」をテーマに講演。「日本の200万台のトラックが明日、すべて電動化・自動運転できるわけではない。着目したのがダブル連結トラックと混載。両連結したトラックが電車のように定時運行する。ドライバーが次々に交代し、トラックがひっきりなしに走る状況を作る。その中に多様な荷主の荷物を混載する」と、同社が取り組む業種・業態を超えた荷主・物流事業者の共創システムを説明した。なお、タイヤ業界ではブリヂストンと住友ゴム工業が同社の株主であり、事業パートナーとして参画している。
同社ではソフトウェアのオープン化も検討中。梅村氏は「日本全国で混載化できるのではないか。船や鉄道にも使えるのでは。デジタルとリアルで日本の物流を最適化したい」と語った。
セミナー最終講演は国土交通省の物流・自動車局 技術・環境政策課専門官の松坂真史氏。「トラック・バスの技術政策の動向」について、主に安全面から解説した。
松坂氏は「自動運転技術の現状と目標」について、「移動サービスではできるだけ早くレベル4を達成しようというのが政府目標。2025年度をめどに全国50カ所、2027年度には全国100ヶ所の展開を目標としている。国交省物流・自動車局だけでなく、国交省だけでもなく、関係省庁と一緒に目標を実現するよう進めている」という。
官公庁、自治体、スタートアップから大企業と多岐にわたる組織が向き合う100年に一度の大変革は着実に進んでいる。
当日の前記以外の講演テーマは次の通り。いすゞ自動車「カーボンニュートラル化の取り組み(EV路線バスの技術紹介)」、UDトラックス「大型トラックの先進安全技術について」、三菱ふそうトラック・バス「大型トラック『スーパーグレート』新型モデルの技術紹介」。