タイヤを通じた交通安全の取り組み
グッドドライバー・レッスンという、モータースポーツとセーフティドライブを融合させた交通安全の取り組みがある。「モータースポーツで培った知識と技術を通じて事故を未然に防ぎ、安全で快適なカーライフを楽しむ」ことを目的とした体験型レッスンだ。モータースポーツを軸とした、この新しいスタイルの社会貢献活動にパートナーとして参加しているのがブリヂストン。トヨタGAZOO Racing(=TGR)や三井住友海上とともに、現場で活動をサポートする。
グッドドライバー・レッスン(=GDL)は、イベントそのままの名を冠したNPO法人(北海道札幌市、竹道雄康理事長)が主催する。2019年に発足し、21年から本格的な活動を行っている。
提唱するグッドドライバー宣言——〈安全、楽しく、快適に〉を合い言葉に、クルマに関わるさまざまなプロが連携し安全運転をサポート。「最後はグッドドライバーのまま卒業する」ことをめざすものだ。
レッスンは講義と実技に大別される。運転する前の準備に効果的なストレッチ体操から、クルマ各部のチェックポイントについてそれぞれの専門家がレクチャーを行う。タイヤに関しては、ブリヂストングループの担当者が空気圧の点検方法やスリップサインと残溝の確認のしかたを実演講習する。
モータースポーツの経験と知見により設定された安全なコースを、参加者は実際に走行しハンドル操作やブレーキングなどを体験。また、普及し始めたADAS(先進運転支援システム)の自動ブレーキ機能、APA(駐車アシスト機能)を搭載したセーフティ・サポートカーやドライブシミュレータの体験も人気のプログラムだ。
レッスンを監修するひとりとして、全日本ラリー選手権の年間チャンピオンを戴冠したベテランラリードライバー、奴田原文雄(ぬたはら ふみお)氏が参加。国内外の過酷なラリー競技に数多く参戦してきた経験から語られるアドバイスは、参加者の胸に強く響くようだ。
GDLはTGRラリーチャレンジ開催時に合わせ行われるケースと、それ単独で開催されるケースがある。23年は全国で計16回開催。24年の全スケジュールはまだ確定していないものの、23年実績を大きく上回る25回以上の開催を予定。すでに1月には沖縄県うるま市内で開催され、「地域の〈安全な運転〉を持続する」ことへの貢献を果たした。
このGDLに24年から横浜ゴムが新たに参加する。カーメーカーではマツダも参加する計画だ。その意義に共感しライバルの垣根を越え、志をともにするパートナーやサポーターが増えつつある。
洗練されたモータースポーツ活動と安全意識の高いドライブが織りなされクルマ文化は成熟していく。それを紡ぐGDLの、これからの展開に期待が高まる。