活路をひらく 輸入タイヤ  (2)マキシス(MAXXIS INTERNATIONAL JAPAN)

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カテゴリー: ニュース
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 ブランディング活動を積極的に

 EV用ライン揃えCASEに対応

 

 台湾には自動車メーカーがいくつもあり、市場で地位を確立している。日系メーカーや欧米メーカーを母体にした外資系企業があれば、ローカル企業は独自路線で市場を開拓する。そのなか、日産をパートナーとするユーロンモーター(裕隆汽車)の傘下で、プレミアムカーを展開するラクスジェン(納智捷汽車)は唯一のEVメーカー。先に台湾初のBEVを発売した。台湾の自動車市場でEVのシェアが躍進する、その原動力となるとみられている。タイヤでも台湾ブランドは確固たる市場ポジションを得ており、日欧米ブランドと肩を並べている。

 

 現在、世界で知られるブランドはマキシス(MAXXIS=正新橡膠工業股份)、ナンカンラバータイヤ(NANKANG=南港輪胎)、ケンダタイヤ(KENDA=建大工業股份)、フェデラルコーポレーション(FEDERAL=秦豊輪胎)の4社。創業は記載順に、1967年、1959年、1962年、1954年。

 この4社のうちグローバル市場で最も高いポジションにあるのがマキシス。米Tire Business誌23年8月28日付号による22年タイヤ売上高は36億7690万ドルで、ベスト10の第10位。

 

 世界TOP10のMAXXIS

 

左から柏木昇二本部長、蔡慶文社長
左から柏木昇二本部長、蔡慶文社長

 日本市場でマキシスブランドの自動車タイヤとグッズの卸販売を行うのが株式会社MAXXIS INTERNATIONAL JAPAN(=マキシス インターナショナル ジャパン、神奈川県伊勢原市)。マキシスブランドの販売状況について、蔡慶文社長=写真上・右=は「グローバルの自動車市場はEV化が急速に進んでおり、マキシスではEV対応タイヤの販売が成長している」と話す。

 自動車のEV化は世界市場で本流。日本自動車工業会が発表した23年の日本の自動車輸出台数は442万台で前年比16%増。しかし中国のそれは491万台に達し、輸出台数で世界首位の座を譲る結果となった。それをけん引したのがBYD(比亜迪)をはじめとする新興EVメーカーだ。中国国内市場にとどまらず、海外での販路拡大を推進する。

「Victra Sport EV」
「Victra Sport EV」

 前記のとおり、台湾でもEV化が急速に進むものとみられる。23年のEVをはじめとする新エネルギー車の新車登録台数は前年比34%増と、過去最高を大きく更新した。「マキシスは米TESLA(テスラ)に装着される大口径サイズを中心に、EV対応タイヤの商品についてラインアップの充実を図っている」と、蔡社長は続ける。

 EV化によりクルマはハイパワー化・高トルク化し、車両重量が重くなる。それに装着されるタイヤには発進時のトラクションをはじめ駆動力、コーナリング、制動力、さらに電費性能と耐摩耗性能、静粛性能と、トレードオフの関係にある各性能を高次元で両立することが強く求められる。

 マキシスはグローバルで、このような技術ニーズに対応する高性能タイヤを開発し、市場へ供給してきている。「Victra Sport EV(ビクトラ・スポーツ イーブイ)」シリーズはその代表ブランドだ。

 「ただ、そのEV化のトレンドが日本市場にまだ波及していないのが現状だ」と、柏木昇二本部長=写真上・左=は分析する。日本の自動車市場ではSUVが勢いを増しているというものの、軽自動車やコンパクトカーが多くを占める。HVが安定的に推移しており、EVへのシフトは先のよう。EVに対応する高付加価値タイヤの販売は自動車市場の成長度に合わせ取り組む方針だという。

 

 草の根活動を続けファンづくりを

 

「Creepy Crawler M8090」
「Creepy Crawler M8090」

 日本国内の市販用タイヤ市場は、新型コロナの感染拡大期の21年と22年に、新車用タイヤに先んじて販売量が回復した。だが23年は一転。1月から12月の通年で前年実績を割り込んだ。夏用タイヤ、冬用タイヤともにインパクトに欠けた。24年上期もゆるやかな推移が続く。

 そのような市場環境で、輸入タイヤにとって大きな問題となっているのが、現在の歴史的な円安だ。

 製造業、とくに輸出が多く価格競争力が重視される企業にとって円安はプラス材料として寄与する。国内自動車メーカーが〈六重苦〉を訴えたことがあった。超円高・法人税率の高さ・労働規制・環境規制・自由貿易協定の遅れ、それに電力不足である。東日本大震災に見舞われた2011年だから、10数年前のことだ。参考までに記すと、この当時記録された円相場は1ドル75円台をつけた。

 輸入業者にとって円安はマイナスに働く。当時〈六重苦〉にあえいだ側と立場を入れ替えると、置かれた現在の厳しい状況を理解しやすい。

 円安を背景とした販売価格の改定について聞くと、蔡社長は「各種のコスト削減などできる限りの内部努力に引き続き取り組む。市販用タイヤの需要と市場の動向を注視し、的確に対応していく」とし、しばらくは静観する構えだ。

 

「BUCKSHOT MUDDER MT-754」
「BUCKSHOT MUDDER MT-754」

 一方で、ブランディング活動にはより一層積極的に取り組むという。ATVやロッククローリングをはじめ、グラスルーツのモータースポーツやアウトドアイベントへの参加を増やし、ファンづくりを図る。柏木本部長は「ニッチな分野であっても、地道に活動を続けることが重要」と、その意義を述べる。「Creepy Crawler(クリーピー・クローラー) M8090」やアウトラインホワイトレター「BUCKSHOT MUDDER(バックショット・マッダー) MT-754」の販売が好調に推移しているのも、これまでの活動が実を結んだ証(あかし)だ。

 また、女性のドライバーやタイヤ整備士に対し、ブランドの認知度をもっと高めたいという。女性の心をひきつけるキャッチーな販売イベントを計画し、市場で展開したいとしている。


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