自動車用品小売業協会(APARA)は10月25日、24年度上期活動報告会を都内で開催した。「洗車の日」に合わせた交通安全への啓発やタイヤ安全点検などの活動を報告した=写真上=。「工業高等学校生の就職傾向と今後の展望」と題した記念講演会では、人材不足が常態化した現在、「プラチナの卵」とも称される工業高校生の採用戦略についてヒントが示された。
少子化が進むなかで、若い人材をいかに採用するかは企業にとって深刻な課題となっている。工業高校の自動車科卒業生の採用活動も厳しさが増す。
講演会に登壇した都立蔵前工科高校校長で、全国自動車教育研究会の古藤一弘会長=写真中=は「高校生全体の求人倍率は約4倍、工業高校の生徒に限れば約20倍だ」と紹介する。
工業高校の自動車関係の学科を卒業した生徒たちの就職先をみると、大手自動車メーカーの名前が並ぶ。生徒や保護者は大手・有名企業を志望する傾向が強い。整備士としての就職を志望する生徒は少ないのが実情だ。さらに自動車関係の学科に通う男子生徒は全体で3%未満、女子生徒に至っては全体の1%にも達しない。
古藤氏は自動車関係の学科だけでなく工業高校生徒全体に視野を広げることをすすめる。
たとえば「女子生徒」。文科省の統計によると、平成元年度と令和5年度を比較すると、高校生のなかで工業高校に通う男子生徒の割合は減少したが、女子生徒の割合は増加。デザインや建築、情報技術といった学科に女子生徒の4割超が通う。求人のストライクゾーンを広げることで、こういった生徒たちの採用機会も増える。
古藤氏は「積極的なインターンシップの受け入れ」が重要であると指摘し、実際の採用に向けては「条件面だけでなく就職後のていねいなフォローや職場環境の整備も不可欠だ」と指摘した。
講演を受けて、小林喜夫巳会長=写真下=は「この会社で働きたいという風土づくりや、人を正しく評価できる制度を整えていくことが重要だ」と述べて、参加者に対して取り組みを促した。
人材不足は一朝一夕では解決できない社会課題。その一方で、モビリティ業界は電動車や次世代車など急速な変化を遂げている。成長ドライブに乗るためには柔軟性の高い若い世代の人材確保は欠かせない。オートバックスセブンの堀井勇吾社長は「競うべきところは競い、協力すべきところは協力し、オールジャパンで世界と渡り合おう」と力強く鼓舞した。