「スリーウッド タイヤの森」森啓二氏  「車輪脱落防止ナット」で事故を未然に  実作業で得た知見ベースに製品化

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カテゴリー: ニュース

 国土交通省の発表によると、令和5年度(23年4月〜24年3月)に発生した大型車の車輪脱落事故件数は142件。前年度の140件に対して2件増加し、昨年に続き統計史上最多を更新した。事故防止対策に係る調査・分析検討会では、「事故車両の多くにタイヤ脱着作業時のワッシャ付きホイール・ナットの点検、清掃や各部位への潤滑剤の塗布、ホイール・ナットが円滑に回るかの確認が不十分であるなど適切なタイヤ脱着作業や、タイヤ脱着作業後の増し締めが実施されていない」と分析。国交省は「緊急対策」と「事故防止キャンペーン」を実施し、取り組みを強化中だ。

 

 大型車の車輪脱落事故件数増加がやまない傾向を受け、タイヤ業界ではJATMAをはじめ全国タイヤ商工協同組合連合会や、メーカー・販売店がそれへの取り組みを進めている。現場では適切なタイヤ脱着・保守管理を作業標準化しそれを遵守する。一方で、大型車を保有する事業者やドライバーには脱着作業後の増し締め来店の呼び掛けを積極的に行っている。

 しかし、その作業には少なからず人的負担がかかるため、繁忙期では徹底されず見過ごされてしまうことがあるようだ。また、その作業は人手を介すため、ヒューマンエラーが生じる可能性が皆無とはいえない。

「スリーウッド タイヤの森」制作「車輪脱落防止ナット」の資料の一部
「スリーウッド タイヤの森」制作「車輪脱落防止ナット」の資料の一部

 このような状況に危機感を募らせているのは関連団体やメーカーだけではない。現場の最前線に立つ人たちもそう。そのひとりが森啓二氏。奈良県のタイヤショップ「スリーウッド タイヤの森」の代表だ。森氏は大型トラックの車輪脱落事故を防止する取り組みとして「車輪脱落防止ナット」を開発した。

 森氏は「大型トラックの車輪脱落事故の原因はナットの緩みが大半だ」と、現場の立場から指摘する。森氏によると、「ナットが緩む原因には回転緩みと非回転緩みがある。回転緩みはタイヤ、ホイールが回転して発生する緩み。振動が加わるため、ネジが緩んでいく。一方、非回転緩みは錆や隙間に起因する緩み。ナット締め付け時はトルク軸力が掛かっているが、時間の経過により軸力は落ち、ナットは緩んでくる」という。」

 また森氏は「ボルトナットが錆びたり、古くなると初期なじみと呼ばれる現象が発生し、緩みが生じる。車輪脱着作業後1カ月以内に車輪脱落事故が多く発生するのはこの初期なじみに起因する」「初期なじみがISO規格ナットに多くみられる原因は、ワッシャがあるのでナットがホイール表面に食い込まないためだ」と解説する。

 このような実際に携わった作業上の経験と知見をベースに、森氏は独自に「車輪脱落防止ナット」を開発した。この「車輪脱落防止ナット」は上下のISO規格ナットからなるダブルナット構造を採用したのが特徴。JISナットとISOナットの良い点を複合した製品だ。

 森氏は「下部ナットがJISナットのように上部ナットに食い込む。下部ナットの上部は偏芯加工されているため緩みにくくなっている。六角形のダブルナット上下座面をテーパーでかみ合わせることで回転緩みに強い」と説明する。

 「スリーウッド タイヤの森」では今後、自社製品の優れた性能を訴求。適正なタイヤ交換作業の実施を呼びかけるとともに、大型車車輪脱落事故の未然防止に貢献していきたいとしている。


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