日本ミシュランタイヤ(以下、ミシュラン)の須藤元代表取締役社長は4日、メディア向けカンファレンスを開き、企業パーパスに掲げる環境負荷の削減をめざす取り組みなどについて語った=写真下=。
ミシュランは国内市販用タイヤの値上げを24年2月に実施したが、11月には25年2月実施の値上げを発表している。
須藤社長は24年の振り返りのなかで「今年の年初には、業界が動いていないなか、単独で値上げをお願いさせていただいた。お客様に支えていただき乗り越えることができた」とする。
25年の再度の値上げについて「心苦しいが、為替の影響が非常に強い。前回上げた想定よりもさらに円安が進んでいる。輸入100%の当社としては大変厳しい環境に置かれている。何とかご理解をいただき、支えていただきたい。ミシュランとしては、製品を継続して届けることが使命と思っている」と、苦渋の決断であることを明かした。
また、須藤社長は企業パーパスとして掲げ取り組んでいる「すべてをサステナブルに」を軸としたタイヤ開発への取り組みについて説明した。
自動車産業が大きく変化するなかでタイヤ市場も同様に変化しているとし、構造的に次のような傾向があると指摘した。(1)安全装備が増えたことによる車両の重量化、(2)予想しにくく急変する天候のなかでどう安全を確保していくか、(3)EV時代とされる電気自動車ブームなどのなかでどう環境への影響を低減していくのか。これらがタイヤに求められるとした。
このようなサステナビリティへの取り組みの一環として、ミシュランは、タイヤの環境負荷への評価にライフサイクルアセスメント(LCA)を採用する。石油資源利用、水の利用、オゾン層の破壊といった16の項目から環境負荷を計算するもの。
原材料採取による森林破壊など地球環境への負荷はないのか、製造ではどのようなエネルギー消費、水の消費が起きるのか、製品輸送にともなうCO2排出、さらにはタイヤ摩耗後の粉塵の環境への影響、回収後の廃棄物や資源の収集と価値化など多岐にわたる。
LCAの観点から、タイヤの環境負荷の80%は車両装着された使用中に発生するという研究結果を明らかにした。それを踏まえ須藤社長は「タイヤをより長く、安心して使える。これを実現することが大きな課題。電気自動車のタイヤのみに必要ではなく、すべての車両、すべてのプラットフォームに必要なソリューションだとミシュランは考えている」と語った。
25年に向けて「24年は市場も激動するなか、お客様に助けてもらうことが多かった。本社移転にともない、新社屋PARK棟もでき、社内でも働き方を大きく変えた。社員の歯車がかみ合っていると感じている。来年はさらに良い年とし、支えてくださる皆さんに恩返しをしたい」と、強い意気込みを示した。