日本ゼオン年末会見  25年は中計第3フェーズスタートへ  タイヤの課題解決へ意欲

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カテゴリー: ニュース
豊嶋哲也社長
豊嶋哲也社長

 日本ゼオンは11日、報道各社合同の年末インタビューに豊嶋哲也社長が応じた。

 豊嶋社長は24年について「日本ゼオンが大きく変わっていくために、一歩を踏み出した1年となった」と総括した。能登半島地震で、光学フィルムを製造する工場が3カ月のあいだ生産が停止したことや、中国経済の低迷が業績でマイナスインパクトとなった。一方、徳山工場では光学樹脂の新プラントの立ち上げを発表。今後の構造改革に向けての布石とする。

 25年度は中計第3フェーズのスタートとなる。同社は30年度までにめざす会社像を「STAGE30」としてまとめ、21年度から四つのフェーズに区切って計画を進めてきた。進行中の第2フェーズは26年度で終了。25年度から並行して進める第3フェーズの詳細を25年5月頃までに発表する方針だ。

 リスクとなるのは外部環境の変化だ。24年は世界的な「選挙イヤー」となった。なかでも米国は1月にトランプ新政権が発足予定で、すでに複数の国に対して重い関税を課すと発言する。豊嶋社長は「米国内で特徴ある製品を作り出すことも中長期的にとり組む必要がある」とした。

 汎用ゴムの国内外の市況について問われると「良くない」と回答。日本の自動車メーカーは海外で苦戦を強いられ、タイヤメーカーに汎用ゴムを供給する日本ゼオンもそのあおりを受ける。徳山工場では6月にエラストマー製造設備の6割を稼働停止する。ただ豊嶋社長は「タイヤは枯れた技術ではない」と強調する。その理由は、新しいモビリティや環境規制にタイヤを適応させていくことが急務だからだ。

 EVの成長は世界的に踊り場にあるが、PHEVなどバッテリー搭載車が今後増えていくことは確実だ。バッテリー搭載分だけ車両の重量も重くなり、タイヤの耐摩耗性向上が課題となる。

 走行中のタイヤ摩擦により排出される粉塵中に含まれるマイクロプラスチックにも規制がかかる。EUが議論を進める次期排ガス規制案「ユーロ7」では排出されるマイクロプラスチックにも規制をかける見込みだ。

 このような課題は日本ゼオンにとって「研究開発の宝の山」となる。「タイヤは目まぐるしく変化する領域であり、SBRでしっかりとシェアを確保したい」とし、日本ゼオンならではの強みを生かした汎用ゴムの展開に自信を見せる。

 企業に対する環境対応が強く求められるなかで、石油からの原料転換も進める。その研究開発の一環で、25年からスケールアップ期に入るのがバイオブタジエンだ。バイオマス(生物資源)由来でCO2排出量低減に貢献する。

 同社と横浜ゴムはNEDOから助成を受けながら、バイオブタジエンの30年社会実装に向け研究開発を進めている。豊嶋社長によれば「CVCを通じたスタートアップとの連携も合わさって、想定通りのスピードで開発を進めることができている」とする。そのうえで「実装が近づけば課題もでてくるだろうが、30年実装へ遅れがないようにしたい」と、強い意気込みをみせた。


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