日本自動車タイヤ協会(JATMA)は23日、ホテルニューオータニで新年賀詞交換会を開催し、100名を上回るタイヤ業界関係者が出席した=写真上=。来賓として、経済産業省製造産業局長の伊吹英明氏、国土交通省物流・自動車局次長の久保田秀暢氏、環境省水・大気環境局モビリティ環境対策課長の平澤崇裕氏が参加した。
年頭の挨拶で登壇した山本悟会長(住友ゴム工業社長)=写真中=は次のように述べた。
「新型コロナウイルスによる感染症は留意すべき点はあるものの、社会は危機を乗り切ったと言ってもよいのではないか。一方で、ロシアによるウクライナ侵攻の戦火や、イスラム組織ハマスとイスラエル間の紛争、シリアのアサド政権崩壊、加えて米国のトランプ新政権誕生などが世界に大きな影響を及ぼす。このような先を見通せない不安定な世のなかにあっても、経済活動は絶えることなく続く。われわれは自動車タイヤの供給という経済活動を通じ、ひとびとの営みのなかで強く希求されるモビリティの実現に貢献していく」
「自動車はモビリティの主役であり、自動車用タイヤはそれを支える最重要商品の一つ。自動車がどのような変革の波にとらわれようとも、タイヤの位置付けが変わることはない。同時に、われわれの活動の達成すべき目標が安全と環境であることも変わりはない。電動化をはじめとした自動車の技術進化のなかで、より高度な安全をいかに実現するかはわれわれの永遠の課題である。
また、社会はひとびとの営みのすべての側面でサステナビリティを求める。社会が求める安全と環境を高い次元で両立させることが、われわれが求めてやまない、世に提供すべき普遍的な価値だ。JATMAはこの普遍的な価値を通し、グローバルなモビリティの発展に貢献していきたい。25年においても山積する課題の解決に向け着実に歩みを進めていく」
清水隆史副会長(TOYO TIRE社長&CEO)=写真下=は「グローバルにみて、日本のタイヤ産業は抜きん出た存在感を有している。各社、各関係者が協力し合いその前途を開いていくという姿勢をぶらさず、業界の態勢をさらに強靱化することが肝要だ」と挨拶。
「ことしの干支は乙巳(きのとみ)。これまでの努力が実を結ぶ、成長と結実の象徴とされる。これにあやかり、これまでに取り組んできた一つひとつの努力が結実するよう、素晴らしい1年としたい」と期待を込め乾杯を発声した。
大口径・プレミアムタイヤに期待の声
JATMA新年賀詞交換会にはタイヤメーカーの首脳をはじめ、商工組合やAPARAなどタイヤにゆかりの深い団体の関係者が一堂に会する。出席者に25年の業界展望について聞くと、JATMA自動車タイヤ需要予測に沿い「前年並みで推移するだろう」との見かたがほとんどだった。
ただ、数量(本数)は〈踊り場〉状態が続くものの、内容・質(金額)では前年実績からの伸長を期待する声が多い。その裏付けとして挙げられるのが、SUVをはじめとする新車装着タイヤの大口径化であり、市販用市場でのプレミアムタイヤ戦略のギアアップだ。
国内メーカー4社は25年年初からSUV向けやスポーツタイヤの分野で新商品をリリースし、春商戦を機に本格的な販売を展開する計画。また、今夏には消費財スタッドレスタイヤで複数のメーカーがモデルチェンジを実施し上位ゾーンのタイヤを上市するものとみられる。
新商品効果を〈起爆剤〉として活用することで、停滞気配が漂う市場の活性化を図る考えだ。メーカーにもタイヤ販売店にも、それぞれにとって収益性が高い大口径タイヤやプレミアムタイヤを市場でいかに訴求し自軍に取り込むか。それが鍵を握る。