
2月に出そろったタイヤ大手4社の24年度業績で鮮明となったのは、「高付加価値シフト」の深化だ。中国メーカーを中心に安価な汎用品が出回るなかで、価格競争に乗るのではなく高付加価値商品を主軸とし利益率を高める。この戦略ははまり、24年度業績では高付加価値商品でしっかりと利益をあげた。27年までに各社進行中の中計の最終年度を迎えるなかで、高付加価値商品を「稼ぎ頭」に育てあげる。
ブリヂストン、攻めの「主軸」に
住友はダンロップで攻勢
「もう販売本数には重きを置かない」。大手タイヤメーカーのある役員はこう強調する。日本のタイヤメーカーの「思い」を代弁した言葉ともいえそうだ。各社は「高付加価値シフト」を敷き、世界を舞台に厳しい競争を勝ち抜く姿勢をみせる。
ブリヂストンの「稼ぐ力」の中核であるプレミアムタイヤ事業は、24年度、営業利益率は13.8%と業績のけん引役となった。とくに重点経営課題エリアの北米と欧州では前年比増収増益で着地した。北米ではプレミアムタイヤ事業が7割近い営業利益を稼ぎ出し、利益率も年間で13.8%、24年下期に限れば14%に達した。欧州では営業利益率が23年下期0.3%まで落ち込んだが、24年下期は5.1%、24年通期で3.1%と大きく改善。PS市販用タイヤで20インチ以上の超高インチタイヤの売上が前年比24%増となった。
25年度も「攻め」の主軸を担う。グローバルでのPSプレミアムタイヤ比率(市販用)は60%超を計画。「新たなプレミアム」と位置付ける「ENLITEN」技術を搭載率も24年23%から25年35%へとさらなる上積みをめざす。
一方、ことし「大きな節目」を迎えたのが住友ゴムだ。
年初に米・グッドイヤー社から欧州・北米・オセアニアでの四輪タイヤのDUNLOP商標権取得を発表。これにより、グローバルでDUNLOPブランドを展開できるようになり、各地域でのポジション確立を見込む。
プレミアム商品化比率拡大にも弾みがつく。24年実績は44%となったが25年予想は46%と着実に高め、30年には60%への拡大を目指す。販売が可能となったエリアはいずれもTier1ブランドとしての認知率も高い。山本悟社長は「Tier1プレミアムカテゴリを確固たるものにする」と強調する。
横浜ゴム、AGWを50%超へ
TOYO TIREも重点商品に注力
横浜ゴムはYX2026のなかで消費財タイヤの生産でメキシコと中国に新工場を建設し、短期間のうちに量産を開始することでコスト競争力を高める計画だ。それと同時に、高付加価値商品である「AGW」の販売にも注力するという〈二兎を追う〉戦略を打ち出す。
同社の「AGW」と18インチ以上の高インチタイヤは24年度、各地域で順調な業績となった。欧州での販売本数は高インチタイヤ販売がけん引し前年比22%増。商品別でも各ブランド・18インチともに前年から拡大した。「AGW」の構成比率は24年実績で43%に達し、25年45%を計画。次期中計では「構成比率50%」を掲げる見込みだ。
24年通期連結業績で4社中トップの事業利益率となったTOYO TIREも付加価値商品を組み込む重点商品に注力する。24年度の北米市場では重点商品への堅調な需要から、安価なタイヤが流入したにもかかわらず販売量はほぼ前年並みと健闘した。
物価高騰の需要減少で苦戦する国内市場でも重点商品販売を強化する。中計の最終年度となる25年度、重点商品販売率を70%超とする計画だ。