PRIMACY5「耐摩耗性能30%向上、長く安全に」

日本ミシュランタイヤは3月から新製品「PRIMACY5(プライマシーファイブ)」を発売した。最先端技術を詰め込んだ新しいプレミアムコンフォートタイヤを初の春商戦で消費者にどう訴求していくか。B2Cマーケティング部ブランド戦略マネージャーの神取孝司氏に話を聞いた。
――前回の春商戦の振り返り、市場分析など。
昨年2月に単独で値上げを行ったが、2024年の販売は好調に推移した。とくに販売強化している高付加価値商品や18インチ以上のタイヤは、引き続き拡販傾向だ。弊社ブランドのプレミアムや高い付加価値をご評価いただいた結果だと思う。
――最近の市場動向は。
市場トレンドは18インチ以上の大口径タイヤ販売が好調で25年以降もその傾向は続くとみている。一方で17インチ以下の小口径タイヤは横ばいだ。
直近の消費者ニーズで顕著となっているのは、オールシーズン系タイヤだ。この数年で大幅に伸びている。市場のパイ自体はまだ小さいが、今後の成長が見込まれる。弊社のラインアップにも「雪も走れる夏タイヤ」というキャッチフレーズのCROSSCLIMATE(クロスクライメート)シリーズがある。こちらの販売も非常に堅調だ。今後は夏タイヤの代表格である高付加価値タイヤのPRIMACYと、成長市場であるオールシーズンタイヤであるCROSSCLIMATEの両輪で拡販に努めたい。
――CROSSCLIMATEとPRIMACY、すみ分けは。
春商戦で注力するのはPRIMACY5だ。CROSSCLIMATEのような「雪も走れる夏タイヤ」への交換を考えるお客様が比較的多いのは、スタッドレスタイヤに履き替える秋以降のタイミングだ。春商戦に関してはPRIMACY5を積極展開し、CROSSCLIMATEは冬商戦に照準を合わせて訴求していく。
――PRIMACY5について。
開発の大前提にはミシュランの理念がある。この理念とは、「すべてを持続可能に」という大きな目標だ。弊社が今後発売する製品がどんな性能を持つ必要があるのか、社内で議論した。それを具体的に性能レベルまで落とし込んだのがPRIMACY5だ。
PRIMACY5は消費者が使うことで環境に貢献できる製品をめざした。具体的には原材料調達・生産から廃棄までのタイヤのライフサイクルで、環境負荷を低減させている。
こうした環境負荷の低減は、タイヤ性能の向上と両立している。たとえば、耐摩耗性能。耐摩耗性は約30%と大幅に向上。摩耗した状態でのウェットブレーキング性能も約2.4%向上した。耐摩耗性能の向上はタイヤのさらなる長寿命化につながる。安全がより長続きし、より長く使用できることで廃棄を減らすことにも貢献する。
「摩耗後の安全性能」については強調される機会は少ないが、ミシュランはこれまでも積極的に伝えてきた。タイヤは残り溝1.6ミリの深さまで使えるが、そこまで使いきらずにタイヤを廃棄してしまう消費者は多い。資源を捨てていることを消費者に訴えるためには、耐摩耗性能が高いだけではなく、摩耗後も高い性能が持続することが重要だ。
弊社は「すべてを持続可能に」を本気で考えている。廃棄されるタイヤを減らしたい。そこがPRポイントになる。
また日本含めアジア市場では静粛性へのニーズが非常に高い。PRIMACY5でも高い静粛性を実現している。サステナビリティを担保しながら、それを基盤にしてPRIMACY5ならではの乗り心地、静粛性、安全性を実現した。
――プロモーションなどについて。
2月後半に、販売店向けウェビナー「ミシュランアカデミー」を3日間にわたり実施した。その動画を後日オンデマンドで提供する。PRIMACY5の理念や商品知識について販売店の皆さんの理解が深まるように準備している。
また、見た目は同じように見えてもミシュランの「特別感」を押し出すため、タイヤサイドウォールに採用した「プレミアムタッチ」をPRで押し出していく。これは深みのある上質な黒さとベルベットのような高級感のある手触りが特徴だ。ミシュランタイヤを付けた場合、外観がどのように変わるのかが視覚的に体感できるツールを開発中だ。年内には展開予定で、ミシュランの魅力が伝わる施策になると期待している。
――消費者へのアピールについて。
ミシュランの魅力をより多くの消費者に知ってもらいたい。より消費者のベネフィットに寄り添った訴求を行っていくことで、より多くのお客様の支持を得られると考えている。既存のお客様の満足度も高めると同時に、新規ユーザーの獲得も強化していく。
そのために、性能とサステナビリティをあわせて訴求していくことが今後の販売コミュニケーションのポイントになる。ミシュランのサステナビリティが、タイヤの高い付加価値につながっていることを伝えていく。
ミシュランがターゲットとするお客様は、同乗者の安全や環境に対して強い責任感を持たれている。そうした強い責任感に応えられる製品を供給し、しっかりとしたコミュニケーションで具体的な性能をお伝えしていきたい。