横浜ゴムはグローバルでブランド力を強化するとともに、将来的にアジア地域にもタイヤの設計部門を設けることを検討し、技術力のさらなる底上げを図る。野地彦旬社長は「市場のポジショニングを上げて、いつかは世界のトップ5になることを目指したい」と将来への展望を示している。
チェルシー効果、欧州でビジネス拡大
同社は昨年、英サッカープレミアリーグの「チェルシーFC」とスポンサー契約を締結し、ユニフォームへのロゴの提示など大々的なプロモーションを開始した。世界的に高い知名度を誇るチェルシーとの相乗効果は高く、2016年の英国でのタイヤ販売量は前年比で7割増を見込む。
野地社長は「欧州で認知度を上げることができた。今まで付き合いがなかった企業からのオファーも増えており、ビジネスが拡大している」と手応えを口にする。
また今年4月には、20年ぶりにアジア最高峰のフォーミュラレース「全日本スーパーフォーミュラ選手権シリーズ」(スーパーフォーミュラ)にワンメイクサプライヤーとして復帰。レギュレーションの変更もあったがタイムを落とすことなく安定した性能を発揮し、ドライバーから高い評価を得た。
「スーパーフォーミュラは今のエンジニアにとっては初めてのカテゴリーだったが、復帰の初年度としては100点をあげたい。当社のイメージアップにも貢献してくれる」と期待を寄せる。
一方、スーパーフォーミュラへの参戦は「技術の継承」という観点からも意義がある活動だったようだ。
「開発の現場で標準化が進む中、一定の範囲の中でタイヤを作るなら問題は起きない。ただし、企業は20年で約半数の従業員が入れ替わると言われる。開発力を上げ、高い技術を伝承していくためには、決められた範囲から一歩出るという経験が必要だった」
OE装着で信頼獲得へ
同社は今年3月に北米市場で商品開発の体制強化の一環として、現地にタイヤ研究開発センターを設置。SUV用タイヤなど現地ニーズに即した商品の開発スピードを高め、商品企画の決定権を現地に委ねることでリードタイムの短縮を進めている。今後は中国やタイといった大需要地にもタイヤの設計開発などを担う拠点の強化を図り、現地の人材も育成していく考えだ。
ブランド力と技術力に磨きをかけた上で、今後さらに取り組みを強化していくのは、グローバルでのOE装着の拡大となる。
例えば中国市場ではユーザーからOE装着タイヤへの信頼は厚く、交換用タイヤにも同一ブランドが選ばれる傾向が強いという。
さらにこれまで独コンチネンタル社とのアライアンスにより制約があった北米でも3月の提携解消で供給の自由度が高まり、事業拡大のチャンスは増している。
野地社長は、「まずはチェルシーで認知度を高め、次にモータースポーツ活動を通じてヨコハマの特徴を知ってもらう。そして各国の名だたるカーメーカーに新車装着されることで、品質面でも信頼を獲得していく」と語る。
その上で「2017年に創業100周年を迎えるが、さらにその先を見据えてグローバル市場でポジショニングを上げていきたい。USドルベースの売上高で世界5位、少なくともトップ10以内に居続ける」と、将来に向けて一層の飛躍を期す。
この数年間で加速してきた様々な施策が今後、どのように発展していくのか、大いに注目される。