これまでバイアスタイヤが中心だった航空機用タイヤ市場でラジアル化が急速に進む中、業界でトップシェアのブリヂストンが事業強化を加速させている。将来的に需要増が見込まれるラジアルタイヤの生産量を拡大させるとともに、新品とリトレッドタイヤを組み合わせたソリューションビジネスを推進することで競争力を高める。
昨年12月に都内で開いた会見でブリヂストンの石橋秀一副社長は、タイに新工場を建設すると発表し、「タイから東南アジア、インド、オセアニア、中東をカバーし積極的に事業を展開する」と意気込みを語った。同社は昨年10月に福岡県の久留米工場で航空機用ラジアルタイヤの生産増強を決定しており、それに続く大型投資となる。タイの新工場では2019年から新品ラジアルタイヤとリトレッドタイヤを生産する。同社の航空機用新品タイヤの生産拠点は久留米のほかに東京工場があるが、タイは初の海外拠点となる。
同社が航空機用タイヤ事業を積極化する背景には、装着タイヤがバイアスからラジアルへ急速に移行していくことがある。民間・定期航空機の機体数は現在約2万機あるが、世界的な輸送量の増加によって今後20年間で3万8000機に拡大すると予測されている。その中で大きな伸びが見込まれるのが短・中距離を飛行する機体で、このカテゴリーには軽量かつ耐久性に優れるラジアルの採用が進むものと見られる。
また機体数の増加に伴い、需要地も従来の欧米だけではなく中国やインド、インドネシアといった新興国へシフトすることが確実視されており、タイの新工場は成長市場の中心的な役割を果たしていくことになる。
滑走路で重い機体を支え、離着陸時にはF1に匹敵するほどのスピードに耐えるなど、過酷な環境下で使用される航空機用タイヤは、一般的なタイヤでは考えられないほどの性能が要求される。このため、技術力で高い品質を確保できるメーカーは世界でも数社に限られる。ブリヂストンはシェア4割を占めるが、その地位を盤石なものにしていくため、今後はソリューションビジネスに注力していく考えだ。
同社では近年、タイヤと防振ゴム、シートパッドを組み合わせてカーメーカーへ提案する「NVHソリューション」、トラック・バス用タイヤでは「エコバリューパック」など、単品販売で終わるのではなく、モノとモノ、あるいはサービスやヒトを組み合わせたビジネスを積極化している。こうした中、航空機用タイヤにおいても新品タイヤとリトレッド、さらにメンテナンスを一体で提供することで新たな価値を生み出し、優位性を確立していく。
元々、航空機用タイヤは複数回のリトレッドを行うのが主流だが、この場合もラジアルにはバイアスと比較して取り替えの回数が少なく、トータルでの使用期間が長いというメリットがある。
石橋副社長は「エアラインの運行形態が急速に変化する中でどういう提案をしていくのか、もっともっとチャレンジが必要」と話し、将来の成長に向けて一層の事業拡大に取り組んでいく考えを示した。