タイヤ空気充てん作業時、空気補充作業中における事故は昨年1年間だけで25件発生した。ただ、タイヤ整備作業全般にまで拡大すると、事故は空気充てん作業時や空気補充作業時に起きるだけとは限らない。自動車のリフトアップ作業に関わる事故、タイヤチェンジャーやホイールバランサーの使用時の事故も発生している。一方で、精度を欠いた計測機器を使用することで、自動車ユーザーの安全を脅かす恐れがあるとの指摘もある。
日本自動車機械工具協会(機工協)がまとめた2006年から2015年まで過去10年間の事故統計によると、整備機器を使用に際しての事故件数は347件だった。このうち事故件数がもっとも多いのはリフトで10年間で211件。次いで門型洗車機が53件、タイヤチェンジャーが18件と続いた。
リフトの事故は他の整備機器として比較して件数が圧倒的に多い。人的被害を負うケースも多く、死亡に至った事故も10年間で7件発生。2015年度1年間だけでも19件の事故が発生し、作業者の死亡が1件、重軽傷を負った事故が5件あった。その原因について、機工協では「取り扱い不良と点検の不履行によるものが多い状況にある」と指摘する。
リフトを設置するタイヤ整備作業場は多く、日常的に使用されるケースも多々ある。適正な取り扱いと日頃からのメンテナンス点検が、事故発生の防止に繋がるのは言葉をまつまでもない。
タイヤチェンジャーによる事故は年間に2度程度の頻度で起きている。2015年度の事故件数は1件、カーディーラーで発生し作業者が全治1カ月以内のケガを負った。
事故を分析した機工協では「取り扱い方法の誤りにより指を負傷する事故が多く発生している」とする。このうち2015年度の1件について、機工協では「セカンドビードを外そうとしたところ、なかなか上がってこないため、下から手でサポートし回転させたところ、指を負傷した」との調査結果を公表している。作業者にとってはおそらく日常茶飯のトラブルで、類似の経験は少なくないが、一歩間違うと事故へと繋がっていく。
ホイールバランサーの事故については「その他機器」に分類されているため、事故の実態が表面化しにくい。しかし、回転カバーを使用しなかったため小石が飛来し、作業者の眼球を直撃するなどのケースがこれまでに報告されている。
一方で、計測機器をはじめ整備機器について精度の劣化に気付かず、そのためにクルマの安全を損なう怖れがあると、専門企業は警鐘を鳴らす。
トルクレンチやタイヤゲージは作業工具ではなく、計測機器であり精密機器。衝撃や湿気、水分は大敵で、その取り扱いには慎重さが求められる。
また精度を保つためには適正な使用と日常管理が必要だ。使用する環境や頻度、条件によっては精度の劣化が加速度的に進み精度誤差の許容から逸脱することもある。従って、これら計測機器には最低でも年に1度は校正が必要とされる。
自動車ユーザーにタイヤの適正使用を図るには、これら計測機器についても適正な使用と管理が強く求められる。トルクレンチやタイヤゲージのメーカーでは、精度を維持するために定期的に校正に出すことを推奨しており、その意識啓発に取り組んでいく考えだ。