日本ミシュランタイヤはトラック・バス用ワイドシングルタイヤ「X One」(エックス・ワン)の販売を加速させる。「X One」は三菱ふそうトラック・バスの「スーパーグレート」にディーラーオプションで設定されるなど新車装着の拡大が見込まれており、それに伴い交換需要の増加も期待される。追い風を受けて同社では「X One」のリトレッドや新たなタイヤ管理サービスにも着手し、幅広いユーザーにアプローチする。
2020年に15年比16倍目指す
ワイドシングルタイヤは、トラックの後輪に装着されているダブルタイヤを1本にするというコンセプト。1車軸当たり約100kgの軽量化が可能で、車両の積載量を確保することで輸送効率向上や低燃費化が期待できる。またメンテナンスの省力化や廃棄タイヤの減少にも繋がる。
「X One」の国内での発売は2007年。当初は導入するユーザーがタンクローリーなど一部に限られていた。ただ、この数年は安全装備の増加により車両重量が増加傾向にあり、積載量を確保したい運送会社からの引き合いが増えていた。また昨年には三菱ふそうの「スーパーグレート」にオプション装着が決まったほか、5月に発売される新モデルにも採用される見通しだ。
同社トラックバスタイヤ事業部の高橋敬明執行役員は、「他のトラックメーカーからの引き合いもある。新車採用によるバリューは大きく、販売を加速度的に増やしていく」と意欲を示す。
同社ではユーザーの拡大を背景に、数年後の交換需要を見据えた体制も整備する。2000年から「X One」を販売している北米などでは既に実施しているリトレッドサービスを早ければ来年にも国内で始める。現在は委託工場で検証作業が進んでおり、実現すればランニングコストの低減に繋がる。また年内には、あらゆるモノをネットに繋ぐIoT技術を活用したタイヤ管理システムの実用化を目指すほか、従来より燃費性能を高めたシングルタイヤを国内に投入して商品の幅を広げる計画だ。
「X One」の導入事例は2013年時点では全国で約50台にとどまっていたが、市場環境が整いつつある中、同社では販売量を2020年に2015年比で16倍程度まで引き上げる。
2017年は国内メーカーもシングルタイヤの本格販売を開始する予定で、認知度は着実に上がっていくものと予想されている。人手不足の影響で運送会社の経営が厳しさを増す中、ユーザーの選択肢が増えることで、市場の活性化へ繋がることが期待される。
ドライバー不足解決に期待
日本ミシュランタイヤは4月20日に静岡県浜松市内で、県内の大手運送会社、浜名梱包輸送が導入した「X One」装着車両を披露した。当日は運送会社やタイヤ販売店関係者らが約40名参加し、「X One」の特徴やメリットを話し合った。
今回、浜名梱包輸送が導入した車両はスカニア製「G410」。オレンジジャパン(東京)の空気圧管理システムと小林タイヤ商会(静岡)のオリジナルアルミホイールをセットで装着し、最大積載量は1万2700kgを確保した。3月から浜松~群馬間で運行を始めている。
注目すべきは輸送業界全体で労働力不足が深刻化する中、「X One」を課題解決に活かした点だ。浜名梱包輸送の伊熊章浩取締役は、「スカニアとX Oneという組み合わせは注目が高く、サービスエリアなどでひと目見ようと囲まれることもある。入社を検討する応募者へのアピールにもなる」と述べ、積載量確保や燃費の改善以外にも効果が波及することへ期待感を示した。