日本ミシュランタイヤは7月28日、新潟県内でトラック・バス用タイヤの「3R」コンセプトに関するユーザー向けセミナーを実施した。3Rはミシュランが推奨するリグルーブやリトレッドを活用することにより、タイヤの経費を削減するとともに、廃棄物の削減や省資源化、CO2排出量の削減を図るもの。当日は北陸信越地区を中心とした運送会社やタイヤディーラーなど約60名の関係者が参加した。会場では同社の取り組み状況が報告されたほか、糸魚川市にある委託先工場でリトレッドタイヤの製造工程の見学が行われた。同社では輸送業界の課題解決に貢献するソリューションビジネスとして幅広いユーザーに訴求していく考えだ。
日本ミシュランタイヤは20年以上前から国内市場でトラック用タイヤを販売しており、以前から「3R」を推進してきた。3Rはリデュース、リユース、リサイクルの頭文字で、ロングライフ性能の向上でタイヤの負担を軽減し(リデュース)、摩耗した溝を掘り直すことで、タイヤ寿命を延ばしつつ安全性を向上させ(リユース)、さらにタイヤにトレッドを貼り直してケーシングを再利用する(リサイクル)のが一連の流れ。
同社では「リトレッドまで含めてミシュランのメリットを享受して頂くことで、ユーザーのタイヤ購入本数が減り、経費が下がる」(トラック・バスタイヤ事業部の高橋敬明執行役員)としており、輸送業界の課題に対して高い効果を発揮するソリューションと位置づけている。
昨今の輸送業界は、景気回復やネット通販の拡大による物流量の増加を背景に輸送コストが高騰し続けている。また人手不足も深刻な状況だ。2020年にはドライバーが10万人以上不足するという試算もあり、人件費や待遇面での改善が迫られている。
さらに環境面でもクリアすべき課題は多い。トラック・バス事業部マーケティング部の石井ミオ氏は、「運送事業者には、エコドライブの推進やCO2の排出量削減といった様々な取り組みが必要となっている。環境保全に配慮しながら輸送効率の向上やコスト削減が求められている状況にある」と指摘する。
こうした様々な課題への対応策として、ミシュランが訴求しているのが3R――同社の試算では、新品タイヤを1回のみ使用して廃棄する場合と比較して、3Rでは1kmあたりの走行コストを21%削減しつつ、原材料は約4割もの削減に繋がるという。
実際にミシュランの3Rを採用して大きな成果に繋げた運送会社の事例がある。250台の車両を保有するこの会社では2008年にミシュランを本格導入し、翌09年に9割のタイヤにリグループ、2012年に1割でリトレッドを実施した。他社製品を使用していた2008年当時と比較して、2013年には約50%のタイヤ経費削減を実現している。1台あたりのタイヤ経費に換算すると、12万円から6万円へと半減したことになる。
同社はリトレッドタイヤの新商品を7月に上市した。新商品は「MICHELIN X MULTI D」(ミシュラン・エックス・マルチ・ディー)と同じトレッドデザインを採用。六角形ブロックの大きな接地面によりウェット・ドライ路面において優れたトラクション性能を確保したほか、偏摩耗を抑制することでロングライフ性能も高めているのが特徴。
高橋執行役員は「新商品は『X MULTI Dと同じものが欲しい』というユーザーの声に応えたもので、ケーシングとのマッチングも非常に良い」と自信を示す。
今でこそ各メーカーが新品とリトレッドを組み合わせて提案するビジネスに取り組んでいるが、日本ミシュランタイヤでは他社に先駆けてソリューション展開を強化してきた。ユーザーへの浸透度はまだ高いとはいえないのが実情だが、今回のセミナーに多くの関心が寄せられたように時代のニーズは着実に高まっている。