リトレッドタイヤの生産現場 徹底した品質管理を
日本ミシュランタイヤがリトレッドタイヤの生産を委託している髙瀬商会の関連会社、トーヨーリトレッドは2005年にミシュラン製品の生産を始め、2014年にはミシュラングループが世界で初めて自社レベルにあると認定した工場。トーヨーリトレッドが以前から取り組んできた品質管理や徹底した安全作業などが高く評価された。
新品同等の安全性を確保したリトレッドが完成するまでには多くの検査と工程が必要になってくる。その一連の流れを追ってみた。
各地から回収された台タイヤは、洗浄した後にまずシアログラフィ検査機で部材の剥離などをチェックする。工場の担当者は「4年ほど前にシアログラフィを導入したが、格段にクレームが少なくなった」と話す。そしてこの検査を通ったものをベテランの検査員が入念に確認する。工場では複数のブランドを生産しているが、ミシュランの場合は、この2つの検査を全数実施するなど独自の厳しい基準を設けているという。
ケーシングの検査で安全であると確認できた台タイヤのみが、タイヤの表面を削るバフィングや損傷部分を整えるスカイプ工程に移される。さらに削った部分に合成ゴムを埋めるフィリング工程を経てケーシングの準備が整う。完成したケーシングにパターンが刻まれたトレッドゴムを貼るビルディング工程で成型し、それをエンベロープと呼ばれるゴム袋に入れて加硫する。
工場は、コールド方式(プレキュア)とホット方式(リモールド)の両方に対応しているが、ミシュランは全てコールド式を採用している。その理由は、「多品種少量生産に向いており、低温加硫でケーシングに損傷が少ないため」だという。
加硫時間はサイズにもよるが約3時間20分。そして加硫を終えた製品を最後にもう一度チェックを行う。ここでは機械を用いて実際の走行時と同等の圧をかけて耐久性をチェックする。
担当者は「日本のトラックタイヤは世界一安いとも言われており、リトレッドも安くて品質が高い製品が求められる」と話す。そのため、工場では年間を通じて生産本数を同じレベルに安定させるといった効率化にも取り組んでいる。
髙瀬商会の髙瀬吉洋社長は、「ミシュランと切磋琢磨しながらより良いタイヤを生産してきた。今後もユーザーの方々にメリットを提供するために努力をしていく」と話し、高い品質を維持しつつ、一層の競争力向上を目指す考えを示した。
なお、日本ミシュランタイヤではワイドシングルタイヤ「X One」(エックス・ワン)の拡販にも注力しているが、現在リトレッド生産のテストに着手している段階だ。これまでは国内では「X One」のリトレッドは実施していなかったが、早期に実現することで、ユーザーの選択肢を広げていく考えだ。