日本ミシュランタイヤは9月15日、栃木県にあるGKNドライブラインジャパンのプルービンググラウンドでトラック・バス用ワイドシングルタイヤ「X One」(エックス・ワン)の試乗イベントを開催した。同社ではここ数年、「X One」の優位性を訴求する取り組みを積極化しているが、今回はタイヤ販売店や運送会社など関係者約120名が参加する大規模なイベントとなった。幅広いユーザーにそのメリットを訴求することで、数年以内に販売量を現在の10倍程度まで引き上げていく考えだ。
「『X One』は今年5月に三菱ふそうの新型車にメーカーオプションで採用され、日本に合った製品であることが証明された」――日本ミシュランタイヤトラック・バスタイヤ事業部の永楽俊平氏は説明会の場でこう手応えを口にした。さらに「特別なタイヤではなく日本市場でスタンダードとなる」と強調した。
近年は車両の安全装備やドライバーの作業を低減する装着が増加するのに伴い、輸送業界では積載量の確保が大きな課題になっている。こうした状況に対し、「X One」は明快な答えを示す。ダブルタイヤを1本にすることで軽量化を図り、輸送効率向上や低燃費化を実現するほか、業界全体で人手不足が深刻化する中でメンテナンスの省力化も期待できる。
一方、欧米とは異なり、国内ではワイドシングルタイヤを本格的に展開するメーカーは限られており、ユーザーにいかにそのメリットを伝えていくか、認知度向上が課題となっていた。
こうした中、日本ミシュランタイヤでは数年前から新しいことにチャレンジする運送会社などを“アドバンスユーザー”と位置付け、定期的に会合を開いてきた。これまでは「X One」の導入事例の報告や装着車両の見学に多くの時間を割いてきたが、今回は「一度、運転を体験してみたいというユーザーの声に応えるもの」(高橋敬明執行役員)として、初めて試乗の機会を設けた。
「X One」は、トレーラー用としてだけでなく強いトルクがかかる駆動軸用としても使用されることを前提にしている。独自技術で均一な接地圧を確保して偏摩耗の抑制が可能となっているが、ワイドシングルタイヤならではのハンドリング性能の高さもセールスポイントの一つだ。タイヤ自体が低扁平に設計されているのに加えて、コーナリング時の支点が1本で済むため旋回性能が向上するという。
実際にレーンチェンジやバックでの車庫入れを体験した参加者からは、「タイヤが崩れない印象だ。剛性がしっかりしているためヨレが感じられない」といった感想が聞かれた。また、「直進走行時には当初考えていたような違和感がなかった」という声もあり、「『X One』は基本的にはダブルタイヤよりも全ての面でメリットがある」という同社の自信の高さを実証した形だ。
「X One」は、今年5月にトレーラー専用モデルが加わり、現在国内では3パターンがラインアップされている。同社では「数年後には10倍程度の需要増が見込れまる」と試算しており、将来的には商品拡充やリトレッドなどを組み合わせた「3R」の導入も視野に入れる。
今後もユーザーへのアプローチをさらに加速させることで、国内では未成熟と言われるワイドシングル市場で独自のポジションを確立する。