自動ブレーキシステムをはじめとする先進の安全技術が開発され、多くのクルマに搭載され始めている。だがタイヤなど足廻りの整備が整っていなければその機能はフルに発揮されない。言い方を変えると、足廻りの整備がきちんと果たされてこそ先進の安全技術が有効になるのだ。
例えば、前を走るクルマに追従するクルーズコントロールシステムや、レーンをキープするアシストシステム――これらはホイールアライメントが正しく調整されていないと、充分に機能しない怖れがある。そのような観点から、足廻りに関する整備は今後、その重要性がますます高まってこよう。
中でもホイールアライメント測定は収益性の高い整備メニューの一つ。近年それに積極的に取り組むタイヤ取扱店が増えてきている。ただ、ホイールアライメント測定は手間のかかる作業であるのも事実だ。車両へのセットから、計測を経て、調整作業を完了するまで多くの時間を要する。
素早く、簡単に、それでいて精度の高いホイールアライメント測定を行うことができないかと、整備の現場から声が上がっている。そのような声に豊富な製品ラインアップで対応を図ってきているのが東洋精器工業だ。同社はこのほど、欧州の名門ブランド「HOFMANN」(ホフマン)のアライナーの取り扱いを開始した。
アライナーの第1弾となる「LABO geoliner(ラボ ジオライナー)670XD」を上市し、このほど新発売した。販売企画部主任の森本祐二さんが新製品の解説と実演デモを行ってくれた。
「LABO geoliner 670XD」は、東洋精器がラインアップするアライナーの中で最上級に位置付ける製品。3Dカメラの解像度が非常に高いという。従って、測定精度の大幅な向上を実現している。
もう一つ、大きな特徴として挙げられるのがターゲットの小型化。「LABO geoliner 670XD」のターゲットは152mm×203mm。従来品のターゲットと比較すると、その大きさは3分の1から4分の1ほど。大幅なダウンサイジングを実現した。それによりタイヤ周辺のスペースが拡がり、作業性の向上にも繋がっている。
そのターゲットはクランプとの一体型である。つまりクランプを通じてターゲットを車輪に取り付けるのだが、それにも工夫が凝らされている。従来、クランプはホイールに組み付けられるのが一般的だった。森本さんは「従来品ではホイールリムへの当たり面に樹脂を採用するなどして、ホイールの傷付き防止を図ってきていました。それでもドレスアップしたクルマの場合、高級なアルミホイールを傷つけまいと、作業する方が細心の注意を払いながらクランプを装着していました」と話す。
それに対して、「LABO geoliner 670XD」に標準搭載の「AC400タッチレスクランプ」はタイヤに組み付けるタイプ。ホイールリムにはまったく接触しない。従ってホイールを傷付けるリスクが大幅に減った。しかもタイヤへの組み付けはクランプのハンドルでワンタッチ。またクラッチ機能付きのノブにより、誰もが常に適正なトルクで締め付けることが可能だ。
「クランプの素材にはマグネシウム合金を採用しました。約3kgという軽量を実現しながら衝撃にも強く、高い耐久性を実現しています」と、森本さん。さらに次のように続ける。「ホイールに組み付けするときに、傷付けてしまうことを怖れて作業性が落ちてしまうというお客様からの声を耳にしていました。この新製品はタイヤだけでクランプすることができますので、作業性は飛躍的に高まっています」。確かに実演で、その取り付け作業が非常に早いことが見てとれる。
この「AC400タッチレスクランプ」はアタッチメントなしで外径483mmから991mmまで対応。即ち145/80R10~375/30R30と、軽自動車からハマーなどの輸入車・超大型SUVまで対応する。
ランナウト補正に際して、作業者がクルマを手押しする、ロールバックという作業がある。クルマを前後に動かす距離が少なければ少ないほど、作業者への負担は軽減されるし、作業効率も高まる。
森本さんによると、「新製品のロールバックはタイヤ角度で10度。当社のアライナーでは歴代最小です」と言う。「この距離だと、大型車であってもタイヤがリフトフロントのターンテーブルから外れることはまずありません。テーブルの範囲内で収まることで、作業の軽労化と作業効率の向上を同時に実現しました」、そう続ける。
「LABO geoliner 670XD」は固定の柱によりカメラを据え付けるのが標準方式。ポストから左右に伸びたアームは最上位地点から最下位地点まで1700mmもの範囲を電動で昇降する。それだけ広範囲にカバーできるのだ。また、据え付け時に床面の状況で柱では水平が取りにくい場合などは、壁面等への取付も可能だという。各店のピットの事情に応じてオーダーできるのも強みである。
アライナーはセンサータイプよりカメラタイプのほうがニーズが高まっているという。精度が高いこと、作業性が良いことがカメラタイプの人気を押し上げている。
「サプライヤーである当社はお客様にとって良い製品をお届けするのが第一の使命と考えています」、このように森本さんは話す。今回、アライナーでもHOFMANNブランドを取り扱い始めたことでニーズへの対応幅が大きく拡がったといえる。