究極派、街乗り派それぞれに対応
東洋ゴム工業は今春、SUV用タイヤ「OPEN COUNTRY」(オープン・カントリー)シリーズから「OPEN COUNTRY M/T」を国内で新発売する。加えて、2016年に軽自動車専用で発売した「OPEN COUNTRY R/T」のサイズ拡大も計画しており、国内でも存在感を増しているSUV市場への対応を強化する。1月中旬に埼玉県川越市の特設コースで開催した試乗会でその性能を確認した。
独自の工法で優れた性能を実現
オープンカントリーは、もともと北米で上市されたブランドだ。2000年代初頭、ライトトラックの販売が伸びており、同社はドレスアップ市場の拡大を見込んでシリーズを開発した。
その際に掲げたユーザー像は、本格的なオフロード性能を求める究極派と、デザインとして、もしくは週末だけオフロードを楽しむ準オフロード派だ。
究極派に対しては「OPEN COUNTRY M/T」を開発。さらに、オフロード・オンロード性能を兼ね備えた商品へのニーズを想定して「OPEN COUNTRY R/T」を生み出した。
「M/T」のトレッドには、石噛みと排土性を考慮した溝や、オフロードでのハンドリング性能を高めるブロック形状を採用した。構造設計では、カーカスプライを3枚配置して剛性を高めたのが特徴。ほかにも強度の高いコンパウンドなどを採用し、耐外傷性や耐久性、高速安定性を確保した。
さらに生産面では、優れた均一性と乗り心地を目指して製造工法「A.T.O.M.」(アドバンスド・タイヤ・オペレーション・モジュール)を活用。従来工法では、トレッドなどの板状の部品を成型ドラムに1回だけ巻きつけていたのに対し、A.T.O.M.工法は細長い材料を螺旋状に巻きつけて成型する。そのため、従来だと避けられない材料の貼り合わせ部が発生せず、バランス調整がほぼ不必要となった。
加えて、ゴムの厚みを必要な部分に確保できるため、トラクション性や耐外傷性に貢献し、デザイン的にも優れた肉厚なサイドウォールを実現している。
「R/T」は、排土性などのオフロード性能を有するショルダー部と、街乗りを想定してドライの操縦安定性を考慮したセンター部を組み合わせたパターンを採用。
さらに、同社独自の解析技術「Tモード」を活用してパターン配列を最適化することでノイズの低減を図った。
究極派向けの性能と快適な街乗りを実感
オフロード性能は、平坦な硬い路面や水を含んだ柔らかな路面、上り坂などが用意されたコースで体験。タイヤは「M/T」と「R/T」で、車両はフォード社の「F-150 RAPTOR(ラプター)」を使用した。
2つの商品を比較すると「R/T」は「M/T」ほどオフロード重視ではないが、様々な路面を難なく走行できた。一方、「M/T」はオフロード究極派に向けた商品だけあって、より高い走行性能を発揮する。
まず、「M/T」は加速時も安定し、“グググッ”とクルマのパワーを効かせられた。さらにブレーキを踏んだ際も停まりたい所で減速でき、思い通りの操縦が可能だ。
轍のある泥道では、「R/T」はタイヤが空転するシーンもあったのに対し、「M/T」は手応えがあり、ハンドルに対して素直に反応してくれる。カーブでも地面を確実にグリップする印象だ。
オンロード性能は、「R/T」を装着したトヨタの「ランドクルーザー200」で一般路を周回して体験した。
この試乗で実感したのは「R/T」の静粛性だ。ブロックパターンを採用しており若干のノイズはあるが、車内の1列目と3列目でも容易に会話でき、音の圧迫感がない。
また、一般にブロックパターンでは、ブロックのたわみでハンドルへの応答や加速・減速の遅れが生じるが、「R/T」は剛性が高いため、通常のタイヤと遜色なく反応してくれる。ゴツゴツした力強い見た目でありながら、快適な乗り心地も十分確保していた。
東洋ゴム工業の光畑達雄執行役員は、「今後、国内でSUVの市場が拡大するに従って、ドレスアップなど行い、見栄えを良くしたいと考えるユーザーが出てくるだろう。そのニーズを拾い、より多くのユーザーに訴求できるようなサイズ拡充をしていきたい」と意気込みを語った。