日本ミシュランタイヤは2019年に建設機械用ラジアルタイヤ「X TWEEL(トゥイール)SSL」を国内市場に投入する。バイアスが主流のマーケットの中で、日本初の実用化となるエアレスタイヤは大きな変革を起こせるか――。
「ユーザーにとって何がメリットになるのか」――ミシュランはこの理念のもと、過去から様々なイノベーションを生み出してきた。その最たる例がラジアルタイヤで、生産財カテゴリーでもライフ性能の高さやパンク率の低減による効果を訴求し続けてきた。今回の「X トゥイール SSL」は、ユーザーのメリットを更に追求した先端技術で、複数のメーカーが実用化に向けて開発を進めているエアレスタイヤのパイオニア的存在といえる。同社では「パンクによる作業中断がないため生産性向上に繋がるほか、作業者の疲労低減にも効果を発揮できる」と、その特徴を説明する。
2012年に北米で初めて販売をスタートして以降、バックオーダーを抱える状況にあったが、2014年に米サウスカロライナ州に専用工場を開設。供給体制が整ったことで欧州、そして日本への導入が決まった。
「ユーザーの課題を全て解決できる」
近年、ミシュランでは小型建設機械用タイヤの開発に注力し、ラインアップを拡充させている。その中で「トゥイール」はオフロードと、硬い路面用の中間に位置付けられる。メインターゲットとなるスキッドステアローダーは、建設現場や農業など活躍の場は様々だが、狭い場所で旋回を繰り返すケースが多く、摩耗が進みやすいことが課題となっている。
4月に愛媛県で開催したユーザーイベントで、日本ミシュランタイヤB2Bタイヤ事業部の高橋敬明執行役員は、「バイアスタイヤは安価だが摩耗が早い。ノーパンクタイヤはトラクションや乗り心地に課題があり、またウレタンタイヤやゴムクローラーなど、どれも一長一短」と話し、「トゥイールはその全てを解決できる」と自信を示した。
実際、エアレスタイヤを上市してから5年が経過した北米では実績も十分だ。あるユーザーは、「バイアスでは300時間だったタイヤ寿命が1000時間に伸びた。700kgの荷物を持ち上げながら作業をしても乗り心地が良く、作業者の疲労低減に繋がった」と話す。また、従来はバイアスやソリッドタイヤを使用していた酪農家のケースでは、「トラクションが向上し、1日の作業時間を4時間短縮した。乗り心地に対しても良い結果が出た」と、想定以上の成果を得ている。
一方、国内では導入コストが通常のラジアルタイヤの3倍程度となる見込みで、どこまでユーザーへ受け入れられるかが普及の壁となりそうだ。ただ、複数回のリトレッドが可能でトータル寿命は大幅に伸びるため、「経済性のメリットは大きい」という。
さらに空気充てん作業や空気圧管理の手間が不要となり、深刻化する労働力不足に対しても有効なソリューションになる可能性がある。
消費財タイヤなどではラジアル化が当たり前になった今でも建機に多く採用されているのはバイアス。エアレスタイヤが市場にどの程度の影響を与えるかは現時点では未知数だ。こうした中でもポール・ペリニオ社長は、「メリットを広めることで市場は変えられる」と意欲を見せる。企業の生産性向上や働き方改革への対応も追い風となりそうだ。今後、OEメーカーやタイヤ販売店と一体となり、幅広いユーザーへ訴求することで、市場を開拓していく。