日本ミシュランタイヤはコンフォートタイヤ「MICHELIN PRIMACY 4」(ミシュラン プライマシー フォー)を7月から発売した。新商品は新品時はもちろんのこと、摩耗が進んだ状態でもウェットブレーキ性能を維持したことが大きな特徴。6月上旬にGKNドライブラインジャパンテストコース(栃木県)で開催した試乗会でその性能を確かめた。
変わる自動車業界のトレンド
「プライマシー」シリーズはミシュランの乗用車用タイヤの中で最もプレミアムゾーンに位置付けられるブランド。2001年に初代が発表されて以降、乗り心地や静粛性への要求が厳しい国内市場でも性能を磨き上げてきた。今回の「プライマシー4」は2013年に発売した「3」の後継モデルとして約5年ぶりのフルモデルチェンジ。これまで培ってきたコンフォート性能や基本性能を維持向上しつつ、ウェット性能を高めたことが特徴となる。
日本ミシュランタイヤ乗用車・商用車タイヤ事業部マーケティング部の大河内昌紀ブランド戦略マネージャーは、従来品が発売された以降の自動車業界のトレンドについて、「安全に対する関心が高まっている」と指摘する。
同社の調査では、ユーザーが新品時にタイヤ購入で重視する性能の1位は「雨天時のブレーキング性能」。また、タイヤ交換時に最も長続きして欲しい性能でも「雨天時のブレーキング・性能ハンドリング性能」がトップとなり、安全に直結するウェット性能が強く求められていることが分かった。
こうした環境の流れを受けて開発した「プライマシー4」のコンセプトは“濡れた路面にも強いプレミアムコンフォートタイヤ”。
ただ、ウェット性能だけを向上したのではない。プレミアムタイヤとしての基本性能とも言える静粛性、そして燃費性能も高い次元でバランスさせた。
大河内氏は、「優れたウェットブレーキングによる長く続く安心感、静粛性と低燃費性能を兼ね備えた。天候やタイヤの減り具合に関わらず、安心して快適な運転ができるタイヤに仕上がっている」と自信を示す。
性能を維持する技術は
「プライマシー4」に採用した技術で特徴的なのは新しい形状を施したタイヤ溝だ。従来品と比較して使用末期(残り溝2mm)での溝体積は22%アップしており、排水性の向上を図った。それに加えて、シリカの量を増やすなど改良を加えたコンパウンドもウェット路面でのグリップ力向上に寄与している。
同社が実施した試験ではウェット性能は新品時に4.5%、摩耗時には13.3%の向上が確認できており、性能が長く持続することを実証している。
静粛性については周波数をコントロールしてパターンノイズを低減する従来のバリアブルピッチに、サイレントテクノロジーをプラスした。これにより、従来品と比較してパターンノイズを6%低減した。
ウェットで体感した“差”
試乗会ではウェットコースを時速60kmと80kmからフルブレーキングを行い、新旧商品および新品タイヤ・摩耗タイヤそれぞれの制動距離を確認した。その結果、「プライマシー4」はどちらのケースでも明らかな性能向上が示され、試験データと同等以上の差が表れた。
また、ドライ路面でのスラローム走行や高速周回コースでは、さすがにプレミアムタイヤらしい上質なハンドリングを発揮しつつ、スポーティで運転が楽しくなる感覚も味わうことができた。
コンフォートタイヤというと高級セダンをイメージしがちだが、「プライマシー」シリーズはトヨタ「86」やBMW「X3」など、スポーツカーからSUVなど幅広い車両へ新車装着されているのも納得できる。
各社が開発に注力しているプレミアムゾーンは、快適性に焦点が当てられることが少なくない中、ウェット性能を鮮明に打ち出したミシュランの「プライマシー4」――大河内氏は「国内ではこれまでなかったコミュニケーションだが、我々のポリシーである『トータルパフォーマンス』に時間軸を加えた」とその狙いを話す。今後、市場で一段と存在感が高まっていくことに期待したい。