住友ゴムの白河工場 3つの工法を活用し、高品質なタイヤを供給

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カテゴリー: レポート, 現地

 住友ゴム工業の白河工場(藤本紀文工場長)は、生産規模が新ゴム量換算で月間1万350トンと、国内では他社を含めてトップクラス。住友ゴムグループのタイヤ生産拠点は、国内では白河をはじめとする4工場、海外ではタイやアメリカ、中国、インドネシアなどに8工場を数えるが、その中でも白河は、2006年に操業開始したタイ工場の月間1万4550トンに次ぐ2番目の生産能力を誇る。

3つの工法を活用し、高品質なタイヤを供給

藤本工場長(左)と大野課長

 白河工場が操業を開始したのは1974年。約60万600平方メートルの広大な敷地にスタッフ100名、技能員1500名の合計約1600名が働く。工場の中心には、乗用車用や小型トラック用、トラック・バス用タイヤを製造する施設が3棟並ぶほか、人材育成を行う研修所も設けている。

 この地で生産されたタイヤの出荷先は国内市販用が半数以上を占め、残りの2割弱が国内新車用、3割弱が輸出用だ。同社では海外工場の展開により地産地消を進めているため、現地で供給拠点を持たない中近東地域や需要が旺盛な北米地域が主な仕向地となる。

 工場は3つの生産工法を活用しているのがほかにはない特徴だ。その中で最も生産量が多い従来工法では、省人化や自動化が進められている。同工場生産技術課の大野利明課長によると、「例えばゴムを練る工程では、20年ほど前は1台の機械に2人を配置していたが、現在は2台を1人で担当している」そうだ。

白河工場の生産設備

 ただ、タイヤの成形工程で部材を筒状のドラムに巻き付ける際は「従来工法においては技能員が作業を担当した方が完成度は高い」(大野課長)など人の手に頼らざるを得ない場面もあるという。また500mに及ぶゴムの冷却ラインが欠かせないため、生産設備の規模も巨大なものとなってしまう。

 こういった課題を克服したのが生産システム「太陽」だ。これは部材工程から加硫工程までをコンパクトに一体化した上で完全自動化を実現したもので、高性能タイヤの生産に活用している。

 この太陽工法では、成形工程でドラムに巻き付ける部材を細長いテープ状にしたことで、従来は人間の技能に頼っていた材料の張り合わせ作業や、それによって生じる貼り合わせ部分(ジョイント)を失くすことができた。

 真円性に影響を与えるジョイントがない太陽工法のタイヤは、従来品と比べて高速ユニフォミティが50%改善したという。

NEO-T01

 さらに、白河工場では製造技術の超高精度を追求した新工法「NEO-T01」も稼働中だ。大野課長は「従来工法と太陽工法ではドラムに巻き付けた部材を、エアを張ってタイヤの形に膨らませていた。新工法はそこを根本から変えて形状を変化させないようにしている」とその特徴を話す。

 これは「メタルコア工法」といって、タイヤ成形工程で実際のタイヤサイズ・内部の形状をした金属のコアを使用し、そのコアに部材を貼り付けることで実現した。

 この技術やコンピューター制御システムなどによって、従来工法と比べて高速ユニフォミティは70%低減。さらに10%の軽量化と、高速走行時の形状変化の50%抑制を達成した。これにより、これまでより更に安全と環境に配慮したタイヤの生産を実現している。

 白河工場は、基幹工場として先進的な生産工法を導入するほか、製造や営業、管理部門の人材育成にも取り組んでいる。今後もこの地から発信される高品質な製品が社会に貢献していくことに期待したい。

関連:住友ゴムのフラッグシップ生産拠点、白河工場が果たすべき役割


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