横浜ゴムは今秋、SUV・ピックアップトラック用タイヤブランド「GEOLANDAR」(ジオランダー)から新商品「GEOLANDAR X-MT」(ジオランダー・エックスエムティー)を国内で発売する。それに併せて、同社は埼玉県川越市のウエストポイントオフロードヴィレッジで試乗会を開催。コアなニーズを持つSUVユーザーに向けた新しいマッドテレーンタイヤの性能を体感した。
新たなマッドテレーンタイヤの開発背景
今回発売が決定した「ジオランダーX-MT」は、「ジオランダー」シリーズで最もオフロード性能を追求したマッドテレーンタイヤだ。同社が中期経営計画「GD2020」で掲げた成長戦略における「ホビータイヤ戦略」の一端を担う商品でもあり、オフロード走行や車両のドレスアップを楽しむドライバーがメインターゲットとなっている。
発売の背景について、タイヤ消費財開発本部タイヤ第一設計部の渡部弘二部長は「北米のお客様からオフロードに特化した商品のご要望があった。また派手な見た目の人気もあり、デザイン性を高めた」と話す。
ただ、新商品はオフロード性能やデザイン性だけに優れたタイヤではない。その最大の特徴は、摩耗性能やノイズなどの経済性、快適性に配慮した点にある。
新商品の開発にあたって、同社ではタイに保有するテストコースでオフロード用の路面を新設。また、デザイン面にユーザーの要望を反映させるなど「企画、技術、生産、販売といった部門が協力してこのタイヤを作り上げた」(渡部部長)。
オフロードユーザーの嗜好に応えるべく開発された「X-MT」は、7月から北米での展開が始まっている。今秋から発売する国内では、17インチで外径の異なる3サイズをラインアップする。
ユーザーニーズに応える性能/ルックス
タイヤ第一設計部の吉田泰之氏は「開発ではオフロードとオンロードの性能を両立させることを最も重要視した」と話す。
今回トレッドは、溝面積・ブロック形状と、サイプの配置・形状をポイントに設計が行われた。一般的にオフロードでのトラクション性能には溝が大きな役割を果たす。だが、溝はノイズや摩耗に対してネガティブな影響を与えかねないため、オンロードでの走行も考慮してパターンを開発している。
また、ブロックに様々な角度でサイプを刻むことで、硬い土やウェットの路面でもグリップ力を確保。路面追従性も大幅に向上し、高い走破性を達成した。
コンパウンドには、摩耗・グリップ・カットチッピングそれぞれに強い3種類のポリマーを混合した。これにより、岩場などでもブロックが欠けにくい強靭なトレッドに仕上がっている。
外観面では「ロック・コンセプト・デザイン」を採用。自然界の岩のイメージがタイヤ全体に取り入れられており、トレッドパターンやサイドのゴツゴツした見た目が印象的だ。
サイド部のブロックは、モーグル、ロック路面で高いトラクション性能や耐カット性を実現すると同時に、「装着して見ても楽しんで頂けるタイヤを意識した」(吉田氏)というデザイン性の高さにも貢献している。
悪路でも優れたトラクション性能を発揮
試乗で使用したのは、トヨタのタンドラとジープ・ラングラー。泥ねい路や斜面が用意されたオフロードコースを走行し、新商品の性能を体験した。
当日は、降雨により路面の泥が柔らかく滑りやすい状態だったが、「X-MT」は上り坂でもスムーズに登ることができる。同社が商品特徴として挙げる高いトラクション性能を実感した。
カーブでも横滑りすることはない。こうした走行性能の高さには、上手く泥を排出できるように設計したトレッドパターンの形状が寄与しているという。
同社が昨年発売した「ジオランダーM/T G003」もオフロード性能を追求した商品だったが、新商品は溝面積の割合が更に増えており、泥ねい路でより優れたトラクション性能を発揮できるようになった。
近年、グローバルで拡大を続けるSUV市場の中で、新商品投入を活発化している横浜ゴム。タイヤにとってシビアな環境でも安心して走行でき、本格的なオフロードユーザーのニーズに対応した「X-MT」により、同社の存在感は更に高まっていきそうだ。
バリエーションと技術力を訴求
世界各地で展開し、特に北米で人気が高い「ジオランダー」は1996年にスタートしたタイヤブランドだ。その魅力は、オンロードからオフロードまでカバーする商品バリエーションにある。
これまで国内では、リフトアップした車両には並行輸入されたタイヤの装着が多かったが、新商品「X-MT」の投入でホビーユースのユーザーにも訴求を強めていく。
そのほか、シリーズの豊富なラインアップにより、国内で需要が拡大しているクロスオーバータイプのSUVから、根強い人気と安定した販売台数を確保している大型SUV、ピックアップトラックまで幅広い車両タイプに対応する。
またシリーズ商品では、新車装着活動も活発だ。昨年はマツダ「CX-5」、ジープ「コンパス」、トヨタ「ハイラックス」、今年はFCA US LLCのピックアップトラック「ラム1500」に採用された。今後もシリーズで純正納品を進め、高い技術力を証明していく考えだ。