国内メーカー各社がタイヤ整備のスキル向上を積極化している。大型車の脱輪事故増加などを背景に、より確実な点検整備に対するユーザーからの期待が高まる中、いかに安全で効率的な作業を徹底していくか――ブリヂストンや住友ゴムはメンテナンスを一つの商品と位置づけて取り組みを強化するほか、横浜ゴムや東洋ゴムなども自主系のタイヤ専業店を巻き込みながらレベルを高める活動を推進していく。
国内4社がタイヤの整備技能コンテスト開催
9月にタイヤ整備をテーマにした技能コンテストが相次いで開かれた。8日の横浜ゴムを皮切りに、9日にブリヂストン、16日には住友ゴム工業がそれぞれ全国大会を開催。各地区の予選を勝ち抜いた代表者が日々の業務の中で磨き上げてきた技術を競い合った。
今年で4回目を迎えた横浜ゴムの技能コンテスト。昨年までは直営店を主体にしてきたが、今回からタイヤ専業店にも参加を呼び掛けたことから会場にはこれまで以上の緊張感が漂っていた。
ヨコハマタイヤジャパンの森昌弘副社長は、「我々のビジネスモデルでは全国の販売店が大事になる。作業の重要性を共有できる場を提供して全体の技能向上を目指す」とその狙いを話す。
大会に社員が参加した専業店の社長は、「メーカーがこのような活動を行うのは非常に良いこと」と歓迎する。さらに「他店がどのような作業をしているのか知ることができ、整備作業にスポットが当たることでモチベーションアップにもつながる」と期待を示した。今後も積極的に参加を促していくという。
安全作業の徹底に向けて競技形式の活動に早くから取り組んできたのはブリヂストンと住友ゴム工業だ。ともに2010年から活動を継続し、その内容も時代に合わせて進化させてきた。
特にこの数年間、発生件数が高止まりしている大型車の脱輪に対しては、事故撲滅に向けた作業の徹底を求めている。
ブリヂストンは10月にスペアタイヤの点検が義務化されることを受けて、その使用可否や取り付け状態の確認を作業標準に反映させた。住友ゴムは事故の大きな要因となっている部品の経年劣化に着目し、点検方法の改良と点検結果の共有を課題に挙げる。
住友ゴムの志賀美也リテール部長は、「いかに効率良く、確実に点検や清掃を行うか。またその状況を正しくお客様にお伝えできるかが大切」と述べ、「作業者とドライバーが安全意識を共有することにより、事故を抑制させていく」と強い姿勢を見せた。
一方で、近年はタイヤとメンテナンスサービスを組み合わせたソリューションビジネスへのニーズが拡大していることから、技術力を通じて顧客の信頼を高めることは差別化を図るカギにもなる。各社は整備を重要な商品と位置づけており、今後もその“品質”を一層引き上げていく方針だ。
ヨコハマタイヤジャパンの森副社長は「作業標準に完全なものはない。毎年気付きをプラスして時代に合った作業を構築していく」と話し、住友ゴムの志賀部長は「グループ全体で、どこでも同じ高品質なサービスを提供することが目標」と展望を示した。
さらに今年は東洋ゴム工業も作業コンテストの実施に乗り出した。20日にはトーヨータイヤジャパンの5支社から10名の社員が参加し、川崎市の店舗で実技の審査が行われた。
同社では以前から研修を通じたレベルアップに取り組んできたが、更なる技能向上や人材育成を目的に、「今回の改善点を踏まえながら、来年は自主系販売店にも範囲を広げていきたい」(トーヨータイヤジャパンの山邊憲一社長)としている。
各社が目標を高く掲げ、高度な整備品質が業界全体に浸透することで、作業事故が起きないクルマ社会につながることが期待される。