原材料の加工から生産までタイの拠点が担う役割
住友ゴム工業は、タイヤのグローバル展開を推し進める中で重要な役割を担うタイ工場の見学会を開催し、今年新たに稼働した農業機械用タイヤ新工場(タイ第3工場)と近隣の乗用車用タイヤ工場(タイ第1・第2工場)を公開した。またタイ東北部のウドンタニ県にある天然ゴム加工所とゴム農園では、高品質なゴムを製造するために高度な加工技術や品種改良の研究開発に取り組んでいく。
今年5月に本格生産開始を開始したばかりの第3工場は、同社グループ初の農業機械・フォークリフト用タイヤ専用工場。同社は国内の泉大津工場(大阪府)で農機用タイヤを生産しているが、海外では初の生産拠点となる。生産品目は農業機械用バイアスタイヤ、コンバイン用ゴムクローラ、フォークリフト用ソリッドタイヤの3種類。
農業機械用タイヤでは、16インチから日本にはない38インチといった大型サイズに対応した。成形機は6台、加硫機は小型用16台と大型用15台の合計31台を設置しており、38インチクラスの大型タイヤになると加硫時間は1時間にも及ぶという。
同工場は、第1・第2工場で培ったノウハウを活かした設備設計が施され、内部はタイヤ工場とは思えないほどの静けさが印象的だ。従業員の約半数を女性スタッフが占めているが、例えば重量のある部材や製品を持たなくて済むよう、リフトを数多く設置するなど、安全で快適な職場環境を構築している。
またゴムクローラの工程では、スチールコードをスパイラル状に巻く最新工法「スパイラル方式」を初めて採用した。バンドの周りにジョイント(継ぎ目)がないため、優れた耐久性と低振動性を実現した高機能ゴムクローラを生産することができる。
工場の敷地面積は13万m2。現在の建屋で2017年(60万本)までの増強はカバーする。それ以外に将来の拡張エリアを確保しており、今後の需要拡大に合わせて設備投資を進めていく。
機械化で期待される需要増
工場を運営するスミトモラバータイランドの産業タイヤ担当の田路大二郎取締役は農業機械用タイヤの需要動向について、「一番の問題は農業政策。今後、機械が普及していくような政策が打ち出されれば急激に広がるし、出てこないと予定より少し低迷する」と話す。
就業者の約4割が農民のタイは、ベトナムやインドと並ぶ世界トップクラスのコメ輸出国。ここ数年はインラック前政権が実施した担保融資制度により、自由な流通が妨げられ、市場価格が混乱したために輸出が急減していたが、政府の干渉がなくなった今年は再び世界トップに返り咲くという見方も多い。
一方、都市部への人口流出や工業化が進んだ影響で、農業の労働力不足は深刻さを増している。こうした中、人手不足を解消するために農業の機械化が進んでいく可能性が高いのも事実で、複数の日系農機メーカーが、新たな拠点を建設するなど、現地で事業を拡大している。
同工場では現地での認知度が高いダンロップブランドの製品を製造し、高い品質を武器に、タイ国内での農業機械用タイヤの市場シェア50%を目指していく。
乗用車用工場は世界最大規模へ
住友ゴムグループにとってタイにおける初のタイヤ生産拠点として2006年に操業を開始した第1工場と、翌年10月に開所した第2工場は右肩上がりで生産能力を拡大し続けている。9月末の生産能力は2工場合計で日産7万6050本。今後も増強を進め、来年には同9万本、さらに最終的に同10万本・年産3500万本まで引き上げて、世界最大クラスの工場へと成長を遂げる計画だ。