住友ゴム、ASEANへ向け供給拡大図る タイ第3工場が本格稼働

新たなゴムの可能性を 天然ゴム農園・加工所

STEC工場内部
STEC工場内部

 住友ゴムグループ唯一の天然ゴムの加工所であるスミラバータイイースタンコーポレーション(STEC)は、タイ東北部のウドンタニ県にある。2011年に住友ゴムと、同国で天然ゴムの加工所・ゴム農園を運営しているTEG社(Thai Eastern Group)が合弁で設立した。

 STECの稲本浩典代表取締役は、会社設立の目的について次のように話す。

 「新しい天然ゴムの研究開発という大きな目標に向かって製造技術を高め、高品質なゴムを作るため加工技術と研究開発を行っている。本社から研究者が定期的に訪問してサンプリングやディスカッションをしているが、自前で持つ意義はそこにある。我々のような拠点がなければ研究は中々進まない。これから天然ゴムの加工技術を上げて、不純物を完全に除去した高品質ゴムやそれに匹敵するようなゴムの開発を行っていく」

 当初はSTR20(通常ゴム)と粘度管理を実施したSTR20CVを生産していたが、2013年からはSTR20CVと、ゴミ分を少なくしたSTR10プレミアムの生産に特化している。生産能力は現在の設備能力をフルに活用することで2015年をメドに現在の月産3500トンから同3800トンに引き上げる。また、将来的には全量をSTR10プレミアムに切り替えていく方針だ。

 納入先は昨年まではタイ工場向けが60%、残りを日本国内の工場向け輸出していたが、今後はブラジル工場にもプレミアムグレードの製品を供給していく。同社グループの天然ゴムの内製化率は現在約1割だが、量産化が目的ではなく、「加工技術を磨きゴムの潜在能力を見つけていく」ことが優先事項となっている。

 加工所は週6日・24時間稼働し、290名のスタッフが交代で作業にあたる。

ゴム農園
ゴム農園

 作業工程は大きく分けて3つに分かれ、①第1次粉砕②そのゴムをさらに細かく粉砕③乾燥・押し出し・プレスの順となっている。

 農園から運搬されてきた樹液の固まりは半分ほどが水分となっているため、まず水を2、3割抜き取るところから始まる。1カ月ほど天日干した後は加工所に移し、専用の機械で粉砕、流水プールで入念にゴミを取り除く作業を繰り返していく。

 最終的に2~3mmまで細かく細分化されたゴムは2時間ほど乾燥し、押し出し機でブロック状にされ、品質チェックを経てからタイヤ工場へ出荷されていく。

 なおSTECではウドンタニ県の加工所のほか、タイ東部のチョンブリー県で第2加工所を運営しており、2014年から原材料に特殊処理を施すことで不純物を完全に除去した高品質ゴム(UPNR)の生産をスタートしている。

品種改良のヒントを

天然ゴムの採取作業
天然ゴムの採取作業

 天然ゴムは赤道を挟んだ地域で栽培され、世界の93.5%がアジア地域に集中している。さらにその70%がタイ、インドネシア、マレーシアで栽培されている。その中でもとくにタイはゴムの栽培に適した気候で、世界で最もゴム栽培が行われている。従来は南部での栽培が盛んだったが、近年は東北部でもゴム農園や加工所が増加傾向にある。

 STECでは、加工所の隣接地および、ここから西へ約100km離れたノンブワラムプー県に2カ所の天然ゴム農園(STEP)を運営しており、これまでに植樹可能面積の98%の土地に約34万本のゴム木を植樹してきた。

 ゴムの木は、植樹から樹液が取れるまでの期間が一般的に5年とされており、STEPでの採取開始時期は2016年後半から。2018年後半からは全量採取が可能となる予定だ。
 STEPで育成しているゴムの木は、約9割がRRIT600と呼ばれるタイで一般的な品種で、100m2当たりのゴムの取れ高は年間18kg、残り1割はRRIT251で、100m2当たりの取れ高は年間28kgが見込まれている。

 STEPでは今後、ゴムの木がどのように成長しているかなどデータを蓄積し、将来に向けて品種改良のヒントを探っていく。

 関連:住友ゴム タイ市場の販売戦略


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