来年、操業開始から50周年
横浜ゴムは6月28日、愛知県・新城工場の見学会を行った。来年、操業開始から50周年を迎える同工場は、隣接する新城南工場と合わせ、現時点で同社最大の生産能力を誇る乗用車用タイヤの主力工場。事業のグローバル化が進む中でマザー工場として同工場が果たす役割、また以前から取り組んでいる各種CSR活動について紹介する。
新城市は、愛知県の東部・東三河の中央に位置する。2005年10月に、新城市、鳳来町、作手村が合併したことで、県内で豊田市に次ぐ2番目の面積を有する自治体となった。
新城工場の操業開始は1964年。敷地面積は名古屋ドーム約4.5個分にあたる22万1000m2と広大で、1日に約4万本のタイヤを生産している。同工場から約3kmの場所には、2004年に分工場として運営を始めた新城南工場があり、2つの工場は、管理部門を統合するなど一体運営されている。
現在の従業員数は2工場合わせて約1950名。生産品目はともに乗用車用タイヤだが、製造しているタイヤサイズは新城工場が14~19インチなのに対して、海外市場向けの比率が高い新城南工場は16~24インチがメインとなる。
工場は3班2交代、年間347日24時間稼働する。ここ10数年間の生産量の推移をみると、2008年のリーマンショック後は需要減から落ち込んだものの、2010年以降は持ち直し、現在は高稼働率を維持しているようだ。
工場内に一歩入ると、従業員による整理・整頓など5S活動が徹底されているためか、古さをさほど感じさせない。横浜ゴムの主力工場とあって成形機69セット、加硫機400台など各工程で機械が整然と並ぶ様は圧巻だ。
同工場では1995年に品質マネジメントシステム「ISO9001」を取得したのをはじめ、2001年に米国3大自動車メーカーが制定した品質システムの要求規格「QS9000」、さらに2006年には自動車産業向けの品質マネジメントシステムの国際標準規格「TS16949」の認定を受けるなど徹底した品質管理に努めている。
例えば検査工程では、機械と人間の目による入念なチェックを行うが、さらにOE向けの一部製品はX線による品質点検が加えられ、より精度を高めている。こうした厳しい品質管理が安心・安全な車社会を支えている。
近年、企業の事業運営において重視されているのがCSR活動。とくに安全衛生や環境保全などといった活動は大きなテーマといえる。これは新城工場にとっても同様だ。
同工場では従業員の安全教育に取り組んでおり、2011年12月に労働安全衛生マネジメントシステム「OSHMS」の認定を取得した。この制度は、事業者と労働者が協力して工場の安全衛生管理を自主的に推進し、安全衛生のレベル向上を図るもの。
ほかにも3年前に「体感塾」と呼ばれる施設を設置した。ここでは実際の事故が起きた際の怖さ・痛さを模擬体験することができる。こうした安全面での活動を継続してきた結果、重大事故は確実に減少傾向にあるという。
社会貢献の一環として環境活動にも注力する。同工場は1999年に環境マネジメントシステム「ISO14001」を取得し、それ以降、同システムに基づいた事業運営を行っている。
2007年1月には液化天然ガス(LNG)を利用したコージェネレーションシステムを導入し、地球温暖化対策を強化。現在は工場で使用する電力の約半分をまかなっている。
製品の輸送方法に関してもCO2削減に向けた取り組みを推進している。2009年からは、従来のトラック輸送から環境負荷の少ない内航船へのモーダルシフトをスタート。現在は輸送エリアを北海道や東北、九州へと拡充している最中だ。さらに昨年からJR貨物の30フィートコンテナ輸送を開始した。九州エリアの需要に対応するため、浜松~福岡間を1日1~2便運行している。
こうした取り組み以外にもイベントへの協賛活動や、新城市と環境保全協定を結び、工場排水の水質検査や騒音測定などを行うことで地域との共存を図っている。工場から高品質な製品を安定的に供給するだけでなく、安全な労働環境や環境保護、地域貢献などあらゆる角度から社会的責任に取り組む同工場の意識の高さががうかがえる。
横浜ゴムは現在、国内以外に世界6カ国・8カ所にタイヤ工場を運営している。来年にはインド工場が稼働するほか、今年4月には北米に新工場を建設すると発表したばかりだ。生産能力拡張を進めているフィリピン工場は、増強が完了する2017年に、生産規模では同社最大の工場となる見込みだ。
同工場の沓沢譲業務課長は「世界各地に拠点ができることで地産地消が進んでいく。今後、新城工場はコスト面などでバランスを取りつつ、海外の他工場のお手本となっていきたい」と話す。
今後、グローバル化は一層加速し、事業環境が急速に変化していく中、高レベルの品質管理に取り組み、積極的にCSR活動を行うマザー工場として、新城工場の重要性はさらに増してくるにちがいない。