太田部長は「我々は企業理念に『人とモノのモビリティに貢献する』ことを掲げている。ミシュランは常に革新的技術を追い求めてきたが、全ての技術はモビリティの発展のためにある。ラジアルがお客様にとって最大のメリットがあるというのが我々の信念」と話す。
国内で30年以上の歴史
OR市場全体では、今でも主流はバイアス。リジッドダンプトラックのように走行距離が長く、耐摩耗性や走行スピードへの耐久性、発熱への対応が求められる建機は、その優位性が発揮されるため、ラジアル化がある程度進んでいる。一方、走行距離は短いが、高い耐荷重能力が求められるホイールローダーのようなタイプでは、まだバイアスが多く使用されている。
同社の推定では、OR用タイヤ全体のラジアル化率はグローバルで約30%程度にとどまる。従ってミシュランが攻め入る余地が大きいようにみえるが、「バイアスを使用している全てのユーザーがラジアルにすることで、メリットを享受できるわけではない」というのが同社のスタンスだ。
「装着する車両やタイヤサイズが何であれ、熱の発生を抑え、安全性を向上させること、さらに高いライフ性能によって休車率を極力減らすというタイヤに求められる性能は変わらない。ただし、ラジアルはバイアスと比較してイニシャルコストが高いので、お客様ごとに使用環境など綿密にヒアリングし、最適な製品を提案している」
ミシュランはセールスを行う際、タイヤディーラーとの協力関係を重要視する。同社は直営の販売店を持たないため、とくに補修用タイヤではユーザーの近くにいるタイヤディーラーと協力し合い、サービス力で顧客との信頼関係を作り上げている。
太田部長は「ライフや乗り心地といったタイヤの性能、価格に対しての相対評価、タイヤマネージメント――この3つの要素を総合的に判断すれば、我々の製品を選択して頂けるのではないだろうか」と話す。
その上で「我々は製品を売りっぱなしにはしない。タイヤについてのアドバイスを行うため、ディーラー様と当社のセールスが定期的にお客様を訪問する。この点が強みだ」としている。今後もディーラーと一緒に、何がユーザーにとって利益になるのか――この点を徹底的に追求していく方針だ。
ミシュランが日本でOR用タイヤ事業を開始したのは1980年。高知県の稲村ダム建設工事で同社の「18.00R33 XRB」が採用されたのが始まり。それから30年以上が経過し、取り扱いディーラーは着実に増加した。
今後の展望について太田部長は、次のように話す。 「直需では、日本には世界的な建機メーカーが数社あるのでさらに関係を深めていきたい。新車用タイヤは、車両とのマッチングが非常に重要になる。将来的にどういうニーズがあるのか把握した上で、それに合うタイヤを開発していきたい。また補修用市場では、ラジアルの価値を継続して提案していく」
「当社のトラック・バス用タイヤを扱って頂いているディーラー様に対しても、『トラックがある場所にはOR用タイヤや産業車両用タイヤのニーズもある』という観点から、今まで以上に働きかけていきたい。そこに、我々が活躍できる場がまだまだあると確信している。どういうビジネスでもそうだと思うが、決して近道はないのと考えている」