進化するシルバーストーン工場
今回竣工した新工場から約4kmほどの場所にあるのがシルバーストーンの「タイピン工場」だ。2010年12月に東洋ゴム工業が全株式を約125億円で取得し完全子会社化した。
生産品目はPC、TBからトラクター用まで多岐にわたり、生産財ではバイアスの製造も行っている。2012年の販売本数は約300万本(約130億円)。内訳は市販用50%、新車用30%、輸出20%。新車用タイヤはマレーシアの国産2大メーカー、プロトンやプロドゥアをはじめ、いすゞ、日産など日系メーカーにもバイアスのLT用タイヤを納入している。
同工場に東洋ゴム工業からコンサルタントとして派遣されている山口祐司氏は「1990年の操業開始当初は米・グッドイヤーから技術供与を受けていた。大量生産を前提につくった工場で、基本的な設備は日本にあるものと大きく変わらない」と話す。
工場の入り口には“我々のキャパは1日1万6000本ある。生産は1万3500本やる”と、スローガンが掲げられている。
買収前の生産能力は年産300万本だったが、成形機や加硫機を増設するとともに、とくに機械のメンテナンスを中心に東洋ゴムの技術指導が入ったことで、現在は3割増の年産400万本まで高まっている。
また、トレッドの押し出し工程には、日本の工場と同じ設備を移植した。従来の設備と比較すると、非常にコンパクトになっているが、機械の安定性が高いため、タイヤのユニフォミティが向上するという。この設備ではTOYO TIRESブランドの部材、シルバーストーンブランドの中でグレードが高い新車用タイヤを製造する。
ただ、スペース的にこれ以上の能力増強は難しいのが現実だ。「これからは品質。東洋ゴムのレベルに少しでも近づけるため、東洋ゴムの生産技術をモデルにして、既存設備にも横展開を図っていく」(山口氏)。こうすることで工場全体をレベルアップしていく方針だ。