台湾企業 探訪② 南港輪胎/NANKANG

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カテゴリー: レポート, 現地

 蒋介石が台湾でタイヤを製造するために設立したとされる「南港輪胎/NANKANG」。1959年1月の設立当初から36年間、横浜ゴムと提携関係にあった、最も日本と近しい関係のある台湾メーカーである。現在も日本での知名度は高く、台湾ブランドでは販売本数№1。新竹縣新豊郷にある本社・新豊工場に彭添城技術副社長を訪ね、同社のモノづくりの現状と展望を聞いた。

日本市場で2%シェア、さらに上げる

彭添城氏
彭添城氏

 ――NANKANGは日本で最も知られる台湾ブランドだと思いますが、どれくらい販売されているのでしょうか。

 「昨年実績で約120万本販売しました。だいたい日本のリプレイス市場の2%から2%強のシェアだと見ています。これをもう少し増やしたいと思っています。NANKANGタイヤは台湾で最初に自動車タイヤの生産を始めた会社で、歴史的に長い間、日本のやり方と技術でタイヤを作ってきましたので、日本市場で販売を伸ばすことができれば大変うれしいことです」

 ――供給体制はどのようになっていますか。

 「生産拠点はここ新豊工場と中国の張家港工場があります。新豊工場はPCR、LTR、TBR、MCRなど各種のタイヤを生産する複合工場ですが、張家港工場はPCRとLTRの専門工場として97年に建設した大型工場です。
 生産量は新豊工場が日産1万3000本、張家港工場が2万3000本、両工場合わせて年間約1300万本(PCR+LTR)です。さらに、中長期の計画の中で第三工場を建設する計画もあります。東南アジアが有力な候補地になると思いますが、それが実現できるよう、一層グローバル化を推進していかなければなりません」

 ――出荷先の地域別構成を教えてください。

 「欧州が40%と最も多く、次いで日本を含めたアジアが16%、北米が14%となっています。アジアの中で日本は最も重要なマーケットと位置付けています。日本には世界のメジャーなカーメーカーが揃っていてタイヤや部品に対する要求性能が非常に厳しく、また品質レベルも高いですね。それでいて四輪、二輪ともに大きなマーケットがある。そうした日本でタイヤビジネスを通じてコミュニケーションを深耕できれば、我々にとって大きなプラスになります」

 ――NANKANGタイヤの主力製品は乗用車系ですか。現在の開発・生産の状況についてもう少し詳しく教えてください。

 「メインはPCRとLTRです。いずれもベルトはスチールでケーシングコードがテキスタイルの「半鋼」、つまりハーフスチールのラジアルタイヤが主力です。LTとTBについては昨年、オールスチールタイヤの開発に成功し、そのうちTBSは19.5インチまで作っています。
 PCRではストリート系がメインで70、80シリーズのレギュラー、60、65シリーズのハイパフォーマンス(HP)、55シリーズ以下のウルトラハイパフォーマンス(UHP)のすべてを生産しています。またサマー、スノー、オールシーズンのすべてがあります。とくに日本市場向けスタッドレスタイヤの開発に力を入れているところです。
 サマータイヤで開発に力を入れているのはストリートスポーツ系で、ドリフト用のタイヤ供給で実績があります。将来はフォーミュラ系のモータースポーツに使用されるようなレーシングタイヤにもチャレンジしたいですね。
 それから4×4やCUVなども含め各種のタイヤを生産しています。また二輪ではMCRがメインです。とくに500cc以上のオートバイに装着するスチールコードラジアルタイヤを開発したのはNANKANGが世界第6番目です。需要の多いスクーター用のバイアスタイヤ(SCB)も今年から生産を始めました。このようにPCR、LTRからTBS、MCR、SCBと幅広いカテゴリーのタイヤを生産する総合メーカーであることが当社の強みであると考えます」

 ――日本ではエコタイヤが潮流となっていますが、それに対応されているのでしょうか。

 「もちろんエコタイヤの開発には力を入れています。欧州では2011年6月にUN/ECE R117に基づくラベリング認証を取得しました。「ECO-2」という乗用車用タイヤです。環境商品への取り組みが認められ、昨年1月に台湾政府から「精品奨」(TAIWAN EXCELLENCE)の表彰を受けました。
 特筆すべきは、今年3月にドイツの認証会社から専門家が来社して、製品の審査はもとより工場の管理体制や品質保証システムなどを精査されました。その結果、「産品認証」を取得しました。認証を取得したのは台湾初です」

 ――その「ECO-2」は欧州ラベリング等級でいうとどのレベルにあるのですか。

 「サイズによって異なりますが、上級グレードのもので転がり抵抗「B」、ウェットグリップ「B」です。いま、「A」にチャレンジして開発に力を入れているところです。日本のラベリング等級でいえば「AA」に当たると思います」

 ――いつ頃までに完成する見通しですか。

 「目標としては、長くても2年、早ければ1年くらいで達成したいと思っています」

 ――日本のラベリングに対してはいかがでしょうか。

 「これまで「NANKANG JAPAN」という日本法人を設立していませんので、NANKANGブランドのタイヤを申請することはありませんでした。LUCCINIブランドのタイヤについては日本総代理店のサンユニオンを通じて申請し、今年1月にラベリングを取得したところです」

 ――「NANKANG JAPAN」を設立する予定はありますか。

 「今後、NANKANGブランドでラベリングを取得できるようにするためには日本総代理店になってくれるところが出てくるか、あるいは当社直営のNANKANG JAPANを新設するか、2つの選択肢があると思います。まだ検討の段階ですが、前向きに考えていきます」


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