――日本が特別なマーケットというのは、どういう点でしょうか。
「日本では国内4社5ブランドでほとんどのシェアを占めている現状で、消費者も海外ブランドをなかなか受け入れてくれない傾向があると思います。最近それも変わりつつあるようですが、我々海外ブランドが日本ブランド並みに受け入れられ、また日本ブランド並みのイメージを持たれるようになるには、まだまだ相当努力していかなくてはいけないと思っています」
――MAXXISの強みは何だとお考えでしょうか。
「第一に、世界のいろいろな国の気候や路面状況に合わせたタイヤを積極的に開発し提供しているのが当社の強みだと思います。そういう意味では、四駆車のカテゴリーでは技術レベルは日本メーカーに近づいてきており、競合できるようになったと思っています」
――開発の体制はいかがでしょうか。
「R&Dセンターを世界に5カ所設置していますし、開発のスピードも速いと自負しています。そのためには市場の声がスピーディーにトップ層まで届くことが一つのポイントになると思いますが、その点、アクションのスピードは速いと思います。例えば技術のトップが直接市場を回ってユーザーの声や情報の収集にあたることもあります」
――世界的に潮流となってきているエコタイヤへの取り組みはいかがでしょうか。
「もちろんエコタイヤは開発に注力している領域です。日本で販売している「i-ECO」は、日本市場では1年くらい前から本格発売しましたが、2~3年前に開発した商品であり、技術の蓄積があります。日本のラベリング制度に基づく等級は「A―c」ですが、さらに上の等級を目指して開発に取り組んでいます。近い将来「AAA」を完成させる目標に向かって研究開発に努めているところです」
――日本市場ではスタッドレスタイヤという特有のマーケットがありますが、それへの対応はいかがでしょうか。
「スタッドレスタイヤの開発を始めたのは7~8年前からです。日本マーケットは大きいですが、日本ブランドが100%近くのシェアを持っていて、参入するにしても非常に厳しいマーケットであることは確かです。欧州やロシアでも需要が出てきていますので、そうした市場と併せて商品の開発を進めているのが現状です。
ご存じのとおり台湾では雪が降りませんから、スタッドレスタイヤの開発にあたっては、日本の北海道や中国の黒龍江にあるテストコースを使用しています。やはり実走テストは欠かせませんから」
アジアに19の生産拠点
MAXXIS(マキシス)タイヤの母体である正新橡膠工業は1967年の設立。自転車タイヤとモーターサイクルタイヤの生産から始まった。
その後、世界の経済成長とともに業績を伸ばし、新工場も相次いで建設してきた。生産品目も自転車タイヤからモーターサイクル、乗用車用、ライトトラック用、トラック・バス用、建設車両用など各種タイヤと拡大し、とくにATV(四輪バギー)では世界一と自負する。
現在では台湾に8拠点(うち2拠点はMCおよび自転車タイヤ生産)、中国に8拠点、タイに2拠点、ベトナムに1拠点(MC生産)の合計19の生産拠点を有し、世界170カ国以上に製品を供給するグローバル企業に成長した。
主な供給先は台湾と中国の拠点からは米国向けを中心とする。このうち中国の拠点は中国内需をメインとしながら、米国以外にも中近東、欧州などへも輸出している。タイの拠点はアセアン、中近東、欧州向けが中心。日本向けは主に台湾が供給拠点となっている。
さらに昨年10月、インドネシアに新工場を建設する計画を発表している。投資額は3億2000万USドル(約320億円)。敷地面積は27ヘクタールに及ぶ。2016年末に操業開始の予定で、四輪車用および二輪車用タイヤを生産する。これで生産拠点数は20拠点となる。
R&D体制もグローバルに展開している。台湾本社敷地内にあるR&Dセンターをはじめ、オランダ、米国のアトランタ、中国の上海と厦門の計5カ所ある。2012年には中国の昆山にテストコースを設立した。このテストコースは敷地面積168万㎡、周囲長は5.2kmの規模。自前のテストコースを持ったことで開発スピードが速まり、技術力の向上を図っている。
従業員数は世界のグループ全体で約2万8000人。このうち台湾は約4000人となっている。とくに中国の厦門には複数の工場があり、そこだけで総勢1万人を超える。このほか上海に5000人、また重慶、天津などの拠点にも1000人から1500人の従業員がいる。
同社はこの10年ほどで業績を飛躍的に伸ばし、2011年実績で世界のタイヤ売上高ランキング第9位となった。その後も伸長を続け、2013年は44億3700万USドルを記録、2001年の4億9500万USドルに比べると900%の伸び率を達成したことになる。
モットーは「100%クォリティ(品質)、100%サービス、100%トラスト(信頼)」。この点、様々な認証および受賞を重ねていることが特筆できる。
例えばISO9001、ISO14001、Eマーク、TS16949、QS9000など数多くの品質認証を取得、日本のTPM優秀賞も受賞している。またOEMパートナーであるトヨタ、GM、フォードなどから多くの表彰を受けている。
ユニークなことは、プロスポーツのスポンサードに積極的なこと。テニスのオーストラリアオープン、バスケットボールのNBA、野球のメジャーリーグ(ヤンキースはとくに有名)、サッカーなどモータースポーツ以外のところでも露出を図っていることである。
将来、日本のプロ野球やJリーグなどでMAXXISが露出してくる可能性はないとも限らない。タイヤビジネスに弾みがつくかどうか、一つのカギになるかも知れない。