横浜ゴムはこのほどスタッドレスタイヤを中心に実車試験を行うテストコース「北海道タイヤテストセンター」(旭川市神居町上雨紛)を報道陣に公開した。同社は昨年まで国内における冬用タイヤの試験は、「T*MARY」(北海道上川郡)で実施してきたが、全面移転した新たなテストコースは従来の4倍の面積があり、効率的なタイヤ開発が可能となる。各社がより性能を高めた商品開発にしのぎを削る中、さらなるタイヤ性能の向上に繋げ、激しい競争に打ち勝っていく。
敷地面積は4倍に拡大。タイヤ試験を効率化
新テストコースの正式名称は「北海道タイヤテストセンター」(Tire Test Center of Hokkaido=TTCH)。同社が2015年3月に上川生産農業協同組合連合会から取得した旭川競馬場跡地に建設したもので、昨年12月から運用を開始。今年1月には野地彦旬社長や旭川市の西川将人市長らが出席して開所式を行った。
一般的にスタッドレスタイヤの実車試験は、天候面から時間が限られているため、「短期集中」とも言われている。その一方で、タイヤ事業がグローバルに拡大する中、近年は評価数が増加し、また評価手法の高度化が進んでおり、1989年に建設した従来のテストコースでは手狭になっていた。
今回完成した新コースの敷地面積は東京ドームの19倍強にあたる90万6462平方メートルと広大で、従来の「T*MARY」(約19万4000平方メートル)と比べて約4倍の広さを確保した。
乗用車用タイヤからトラック・バス用タイヤまで幅広いカテゴリーの試験を行う同施設の中で、最大の特徴は約1kmにおよぶ直線の圧雪路。「T*MARY」にはここまで長い直線がなかったが、新コースでは最高時速100km超での高速試験が可能となり、操縦安定性や応答性など、より高いレベルで評価ができるようになった。
また旋回路は2種類へ拡大し、登坂路は5レーンを用意した。さらにスタッドレスで重要視されるアイス性能の試験に使用する氷盤路は“より滑りやすい路面”を目指し、独自のノウハウを詰め込んだ管理を行っている。
同社タイヤ試験部の桑島雅俊氏は、「広くなった新コースでは同時にテストを行うことで、数量がこなせるようになった」と述べ、開発の効率化に期待を寄せる。なおテストコースに常駐するスタッフはこれまでより1割から2割ほど増やす予定だという。
また今後の展望について、同社執行役員でタイヤ消費財開発本部長の野呂政樹氏は、「2020年頃までには屋根があるタイプの氷上試験設備を設置したい」と話す。
屋内型の氷上ドームは天候や気温の変化に左右されにくく、安定した路面状態でのテストが行えるため、さらなる試験精度の向上に繋がる。こうした設備があるタイヤ試験場はブリヂストンの北海道プルービンググラウンド(士別市)など数えるほどしかないが、同社では敷地内の風向きや気温など詳細なデータを収集した上で、どのように設置するのがベストなのか、検討を進めていく予定だ。
同社が建設候補地として同地を選んだ理由のひとつはそのアクセスの良さ。旧コースは旭川空港から車で1時間ほど要していたが、「TTCH」は空港から10分、旭川駅にも15分と利便性に優れる。国内外の取引先を招いた試乗会を行う際はもちろんのこと、日々、現地で業務にあたるスタッフは早朝や夜間にもテストを行うケースがあるため、体調管理の面からもメリットとなりそうだ。
同社では「TTCH」以外にスウェーデンの契約コースでも冬用タイヤのテストを行っているが、「冬用タイヤに関して、開発の中心はやはり日本」。――評価試験の中枢を担う「TTCH」にかかる期待は大きい。
なお従来の「T*MARY」は冬季の使用に限られていたが、「TTCH」では12月後半から2月中旬までスタッドレスの開発を行い、雪解け後に整地を行った上で5月から10月頃までは夏用タイヤのテストにも活用していく。