札幌市内に2店舗を構える有限会社タイヤショップ金(こん)は、徹底したサービス力で顧客から高い信頼を得ている自主系タイヤディーラー。同社のトラックセンターを訪れ、代表取締役の金政博氏に同社の取り組みについて話をきいた。
「顧客のためにできることは全てやる」
札幌市北部に位置する北区。かつては農業地帯だったが、宅地開発が進んだ現在では約27万人が暮らす、市内10区の中で最も人口が多いエリアとなっている。タイヤショップ金は1992年6月に北区に隣接する西区発寒に消費財タイヤの販売店(現・本店)として設立した。
金政博社長は当時を振り返り、「私自身は以前、タイヤ販売店に勤務していたが、そこを退職してトラック1台で事業を始めた。元々、生産財が得意だったが100坪に満たない土地では難しく、10年間くらいもがいていた」と話す。
そこから数年、少しずつトラック用タイヤの販売を手がけ、2004年には念願だったトラックセンターを北区新川に開設した。今では2つの店舗合計で従業員は11名、トラック用タイヤはもちろんのこと、超大型の建設・鉱山車両用タイヤの販売・整備までを担う、地域を代表するディーラーに成長した。
「平成に入ってから市内で生産財を取り扱う店舗の新規出店は恐らく当社以外にない。自主系販売店は世代交代の波なのか、年々減少し、その一方でメーカーの直営店は増えている。札幌市周辺で生産財をメインに扱っている20弱の会社で、半数以上が直営かメーカーの資本が入っているようだ。元々、北海道は非常にタイヤの価格が安く、それだけ厳しい市況だといえる」――昨今の事業を取り巻く環境について金社長はこのように話す。
こうした状況下、自主系ディーラーである同社が、わずか10数年でここまで事業を拡大できた要因はどこにあるのだろうか? そこには地道ではあるが確かな技術力と、努力を惜しまない営業活動でユーザーから高い信頼を得ている姿が浮かび上がってくる。
「札幌や石狩、苫小牧、千歳など道央圏が主な商圏となっているが、求めるお客様がいれば、たとえ片道3、4時間かかる場所でも行く。『あそこは遠いから』という考えはない」
さらに同社は「顧客のためにできることは全てやる」という方針の下、技術力を磨き続けてきた。言葉にすると簡単だが、実はこれが難しい。ここでいう技術とは何も特別なことではなく、全従業員が“当たり前”のこととして日々実践しているものだ。
「一度我々のタイヤ交換を見て頂いたらもう他には行けないような作業をしようと普段から心がけている。一つ一つの手間を惜しまずに当たり前のことをきちんとやる。ほかにも例えば、リペア作業なら直る範囲のものであれは、徹底的に直す。貼り付けて終わるという意味ではなくて、修理してなおかつ安全に走れるという確証があるものに関しては徹底的に修理し、万が一使用できなかったものに関しては代金をお戻しする。そこまで自分たちを追い込んで仕事をしている」――こうしたプロとしての真摯な姿勢がユーザーに評価され、スタッフのモチベーション向上にも良い影響を与えているようだ。
今後の目標について、金社長は「自分たちだけが満足を得るのではなく、まずはお客さんが喜んで頂くこと、そこが原点であり、今後も絶対に変わらない」とした上で、「もし願いが叶うのであれば、もう少し地域を絞って、生産財を扱う小型店を出店してみたい」と意気込みを示す。
「今のトラックセンターの規模なら、これくらいの苦労があるというのが身にしみて分かってきた。逆に小規模でも同様のサービスが提供でき、身動きが取りやすいような店舗を将来はやってみたい」