「北米は人件費が高く、どうやってコストを下げるのかが大変。新工場はオートメーション化により、人手をかけずにラインが1本に流れていくようなイメージ」(野地社長)。 現在はトレーラー用の1パターンのみを生産しているが、近く22.5インチや24.5インチをメインに品目を拡大していく。第1フェーズでは10台の加硫機を設置。倉庫には約10日分がストックできる。
同社はこれまで北米市場へトラック・バス用タイヤの供給は、GTYによる生産分のほか日本、タイ、中国からの輸入で対応してきた。現地でヨコハマブランドのタイヤはコストパフォーマンスや燃費性能でトップクラスの評価を得ているほか、リトレッド用としてのケーシングの質も高いという。
一方でヨコハマタイヤはすでに全米で80%のディーラーで取り扱いがあり、この数年で引き合いが増加傾向にある中、供給面でタイト感があった。現時点の年間供給能力はGTYの生産分(60万本)などと合わせて120万本だが、新工場の稼働により早期に200万本まで引き上げる。またOE向けについても採用車種の拡大に向けてアプローチを強めていく。
北米事業は同社にとって「最もプライオリティが高い市場」と位置づけられており、一層の地産地消を進める。野地社長は「アメリカの規格(TRA)で作っている製品は欧州では騒音規制があるため対応しにくい。北米で使用するタイヤは設計から開発、生産まで北米で行いたい。どういう車で、どういう使われ方をしているのか、現地の人間が一番分かっている」と述べ、早ければ3年以内に研究開発センターを設ける考えを示した。
米・タイヤ専門誌「モダンタイヤディーラー」によると、北米のトラック・バス用タイヤの需要は新車用、市販用合計で2300万本(2014年)と、単純計算すれば日本の約3.5倍の規模。さらに「先進国の中で唯一人口が増える国で、それに伴い物流は確実に伸びる」(同)と、今後も需要は堅調に推移するものと見込まれる。
同社は中期経営計画の中で北米での体制強化や生産財事業の拡大を戦略のひとつに掲げており、今回のミシシッピ工場の稼働により、そのベースは整った。ミシュランやブリヂストン、グッドイヤーなど主要メーカーがひしめく市場で盤石な供給体制を築き、競争を勝ち抜いていく。
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