東京都三鷹市の市街地に店を構える有限会社プロローグミタカを訪ねた。地域から来店する車の半数以上は輸入車でアウディ、メルセデス・ベンツ、BMWなどが多い。しかも固定客が多いという。匠の技と的を射た接客対応が客の心をがっちりつかむのだろう。売れるタイヤも比較的プレミアムタイヤの割合が多くなるのも頷ける。地域に根ざしたタイヤ専門店の一つのモデルともいえそうだ。
経験豊富な高級輸入車の足回り整備
プロローグミタカはもともと都内の老舗のタイヤプロショップで、数年前からサンユニオン株式会社(東京都千代田区)の直営店となっている。
所在地は三鷹市野崎4-3-44。三鷹市牟礼と国立市谷保を東西に結ぶ、交通量の多い東八道路沿いにある。付近にはネッツトヨタやフォルクスワーゲンなど数多くのカーディーラーが軒を連ねているのが印象的だ。沿道からは、黄色の建物がすぐ目に入る。近づけば、朱色の看板に白抜きで書かれた「PROLOGUE」の文字とミシュランの看板が目立つ。ただ、整備ピットが脇道に面していることもあって、遠目に一見しただけではタイヤショップかどうかわからない。
商圏としては、三鷹市を中心に隣接する武蔵野市、調布市、府中市などの周辺エリアを含め広域をカバーする。中には都下からの来店客もいるという。顧客層は40代の男性客がメインで、来店する車はアウディやメルセデス・ベンツ、BMWといった高級輸入車が多いのも特徴だ。スタッフは3人体制。営業時間は10時から19時まで、定休日は日曜日のみ。
石橋賢司店長はこの道30年のベテラン。プロローグミタカに従事して丸15年になる。それ以前は、高級輸入車の仕事が多い都内のタイヤショップで経験を積んだ。そこで培った輸入車の足回り整備のノウハウが今に生きている。「当時はハンドルの振れを直す作業が多かったので、自ずと高いレベルのバランス調整技術が習得できた」と話す。
ハンドル振れに関与することが多いのがタイヤのユニフォミティ。非常に微妙で繊細な部分でもある。「今の機械はよくできているので、機械に任せれば、ある程度の経験があれば適正なバランスをとることができる。ただ当店では、それに加えて目視によってユニフォミティ(位相合わせ)を調整している。他店より緻密にバランス修正を行うことができれば、そのお客様を当店の顧客にすることができる」という。長年、高級輸入車を扱ってきた経験が、整備の標準レベルをグっと上げ、顧客獲得につながっているのだ。
取り扱うタイヤは、国内外のメジャーブランドからリーズナブルなアジアンブランドまで豊富。販売量が最も多いのはミシュランで全体の約5割を占める。次いでコンチネンタル、ピレリなどの欧州ブランドが主力。またスタッドレスタイヤでは国内メジャーの指名買いも多いという。
「ほぼ全てのブランドを取り扱っているので、あらゆるユーザーのニーズに応えられるのが当店の強み。また店の在庫を極力少なくし、フレッシュなタイヤをお客さんの手元にお届けすることを基本としている」
小売事業のほか、以前からカーディーラーとの長い付き合いがあることから、卸売も多く、売り上げ構成は半々。まさしく小売、卸を両輪とし、それを支えるのが顧客からの信頼であることは言うまでもない。
商圏には量販店をはじめ、国内タイヤメーカーの直営店など競合する店が多い。「この近くだけでタイヤショップは4軒ある」そうだ。そのような環境下で、他店との差別化をいかに図っていくかが重要なポイント。この点、プロローグミタカでは丁寧で確かなサービス内容と商品知識に裏付けられた接客をどこよりも大事にすることで、地域で存在感を示している。そこには確かに“匠の技”がある。
接客の仕方も大事だ。「ときどきタイヤを持ち込むお客さんもいるが、気持ちよく対応するように心掛けている。それで適正な工賃料金をいただければ、それも重要な収入源となる。また近隣のカーディーラーさんから作業を依頼されることもよくある。口コミでお客さんから紹介していただくことも少なくない」という。
石橋店長に今後の展望について聞いたところ、「市場が変わりつつある中で、私どもとしてはこれまでの強い部分をさらに磨き続けようと思う。その結果、より幅広いユーザー層に信頼されることを目指していく」と話してくれた。