新たな挑戦 ブリヂストンタイヤジャパンの生産財タイヤソリューション

西日本最大のバンダグ・リトレッドファクトリー

 ブリヂストンタイヤジャパン(株)がリトレッド工場と廃タイヤ中間処理工場の一括拠点として昨年7月に発足した「ブリヂストンタイヤリサイクルセンター大阪」(大阪市住之江区)を訪ねた。ここは世界でも例がない、タイヤソリューションの新たなチャレンジの現場でもある。発足から約1年半、その現況をリポートする。

 ブリヂストンタイヤリサイクルセンター大阪(武市誠也センター長)は地下鉄・四つ橋線の北加賀屋駅からほど近い工業地区の一角にある。約2000坪の土地にリトレッド工場のバンダグ・リトレッド大阪ファクトリー(略称BRF大阪)と廃タイヤの中間処理工場である大阪サービス(櫻井通史社長、ブリヂストンタイヤジャパンの子会社)の住之江工場が敷地内に隣接している。

ブリヂストンタイヤリサイクルセンター大阪
ブリヂストンタイヤリサイクルセンター大阪

 もちろん両者の間に壁はない。むしろそのゾーンは回収されたタイヤが行き来するいわば静動脈のようなもの。「ゼロ検」と呼ばれるタイヤの検査、つまり回収されてきた使用済みタイヤがリトレッドの台タイヤとして再利用可能かどうかを選別する大事な場所である。

 そこで台タイヤとしてOKになったタイヤだけがリトレッド工場に搬入される。工場内では受入検査工程をはじめ針穴検査工程、シアロ検査工程を経てはじめてリトレッド加工され、最終的にリトレッドタイヤとして生まれ変わる。またそのゼロ検ではねられたタイヤは大阪サービスの中間処理工場に回され、他の廃タイヤと同様に32分割にカットされ、出荷先である製鉄工場や製紙工場で熱源として再利用されることになる。

 同センターの発足には、プロジェクトチームを組んでから1年半もの準備期間を要した。それだけにセンター全体の設計はもとより、とくにリトレッド工場は綿密に設計された印象が強い。例えば設備・部材・完成品等のレイアウトは動線を十分考慮したものとなっている。また各工程には集塵対策、騒音対策、化学物質の保管面など環境負荷低減の取り組みが随所に組み入れられている。

 BRF大阪はBRF兵庫(加東市)とBRF大阪(泉佐野市)の二つのファクトリーを移設して統合したもの。従業員数は20名。加硫缶を1基増設し3缶態勢とし、西日本最大のバンダグ・リトレッドファクトリーとしてスタートした。現場からは「人数も増え、スタッフ同士の知識のやり取りが非常に密になった。それが凝縮されて、いいものができている」と統合の効果を評価する声が多い。

 加硫缶は1缶あたり最大22本入る。これを1日2回転(加硫)して44本を生産。それが3缶あるので合計132本となる。月産能力にして2640本、年産3万1680本ということになる。目下のところフル稼働の状況だ。

 ブリヂストンが生産財タイヤのソリューション活動として力を入れているのが「エコバリューパック」。環境対応型の新品タイヤの提供、リトレッドによる二次寿命の付与、さらに保守・点検サービスをパッケージにして提案するビジネスモデルである。

リトレッドと廃タイヤ中間処理の一括拠点

ブリヂストンタイヤリサイクルセンター大阪
ブリヂストンタイヤリサイクルセンター大阪

 近畿地区におけるエコバリューパックの契約数は約1500社、車両数約3万台にのぼる。こうした中で同センターは、京都府福知山市の株式会社ブリヂストントレッドシステムとともに重要な役割を果たしているのだ。

 とくにバンダグ・リトレッドファクトリーは「COC(Customers Own Casing、自社台方式)」を支えるリトレッドの拠点。現在、全国7つのファクトリーがあり、BRF大阪もその一つ。バリューパック契約を結んだ顧客から摩耗したタイヤを一旦預かり、リトレッドを施して顧客に戻す。ただ、その上にセンターができたことで「最終処理までブリヂストンにお任せ下さいと言えるようになった」(武市センター長)というのが強みだ。

 顧客からの信頼も確実に増していると確信する。事実、「当センターを見学に来ていただいた会社のうち8割以上の会社にエコバリューパックを採用いただいた」という。なるほどユーザーからの関心と期待は大きいようだ。

 しかし、越えなければいけない課題がある。まだ課題を抽出している段階。その明確になった課題をクリアできれば第2、第3のリサイクルセンター設置が可能になるかも知れない。そのモデルとしての責任を担っているわけだ。

 「立ち上げ当初から環境配慮と事業収益を両立することを基本としたコンセプトを詰め込んでいる。センターのすべての機能にそれらが凝縮されている。最終目的に向かって一歩ずつステップを着実に固めていく」としている。

 大阪サービスは30年以上の歴史を持っている。その歴史をたどれば1980年頃にさかのぼる。当時、関西の有力企業が環境問題への対応策の一環として、共同出資により「関西タイヤリサイクルセンター」を立ち上げた。そこにブリヂストンの販売会社も参画し、その直系の大阪サービスが受託業務として廃タイヤの中間処理業務を運営してきたという経緯がある。

 その後1990年代後半から2010年頃までの間に出資企業の離脱が続き、最終的には2011年12月にブリヂストングループの単独資本となった。

 回収する廃タイヤはPCとTBをメインにMCからORまで多品種にわたる。処理量はおよそ月間平均1000トン強。廃タイヤの回収エリアは大阪、京都、和歌山、兵庫、滋賀の2府3県をカバー。主に近畿・西日本地域にある製鉄工場や製紙工場が主要納入先となっている。

 従業員数は約30名。本社は大阪市西区新町。西淀川区にも中島工場がある。


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