あらゆる角度から「攻める店舗」めざす
住友ゴムが中国で展開を始めた「D-ガード」は店舗に対して経営のノウハウや運営方法を提供することで安定的な販売増に繋げていくのが特徴だが、その仕組みを支えるのはシステム化された顧客誘引手法と顧客管理方法にある。住友橡膠(中国)有限公司の濱田裕史シニアゼネラルマネジャーにその狙いをきいた。
――D-ガード出店の背景は
「中国は専業店が圧倒的に多くチャネル構成比の85%を占めています。さらなる増販を図るには専業店との取引数を増やすことが重要です。
我々の取扱店は月間販売量などに応じて旗艦店『タイヤ・マスター』から『契約ショップ』まで4つに分かれています。ただ、これらの店舗は極端に言えばタイヤを1カ月にどれくらい販売して頂けるかという契約であり、店舗運営の訓練は行っても、経営に関して我々はタッチしません。いわば、本数契約による囲い込み戦略でした。
一方、D-ガードは全く別の形態であり、今までにないサービス付帯型の小売囲い込み施策として展開しています。販売代理店と長期的かつ安定的な販売体制を構築し、中国では今までに無かった全国にまたがるような量販型のチェーン店を我々が先んじて展開していきます」
――D-ガードの概要について
「看板や内装・外装を統一するだけではなく、独自の運営方法の指導による経営をして頂く新しい販売店の姿で、これが従来とは根本的に違う部分です。我々はあくまでもノウハウを提供し、各地域で運営をして頂く――いわゆるFC型の経営戦略となり、そのポイントはシステム化された顧客誘引手法と顧客管理方法にあります。
まず顧客導入ですが、最も利用頻度が高い洗車業務を基本サービスとし、顧客の導入拡大を図っていきます。そして車両の点検サービスを提供することにより、メンテナンスに関する専門的な意見を出しながら販売チャンスを拡大していきます。
接触頻度を増やすために何を扱っていこうかと検討した結果、目をつけたのが洗車サービスでした。中国では洗車は『どこかでしてもらう』という発想が一般的ですが、その作業品質は高いとは言えません。
そうした中、我々が行う洗車の柱は『高品質』『高価格』『高いサービス』の3つです。中国ではまだ珍しい撥水洗車を導入し、顧客満足度を向上しつつ、現地の一般的な洗車価格の3倍~5倍程度の価格を設定しました。これは洗車以外への販売に繋がる可能性のある顧客を取り込むという意図もあります。サービス面に関しては、全て店内で作業を実施します。また質の高い接客を徹底することで他店との差別化を図っていきます」
――顧客をリピーターに繋げるための施策は
「中国で普及している『微信』(ウェイシン)を活用し、さらに我々の顧客管理システムを運用していく計画です。
D-ガードでは来店した全ての車に安全点検を実施していこうと考えています。タイヤはもちろんオイルやバッテリーなど全部で33の点検項目がありますが、このデータを1件1件登録することで、その車がどういう状況なのか、購入履歴や点検結果など全て分かる仕組みを構築していきます。これを積み重ねていくことで、“攻めの顧客管理”が可能となり、これが我々の目指す究極の姿です。
攻めの顧客管理とは、管理システムによって顧客ごとに履歴を管理し、究極のマンツーマン接客を可能にすることです。今までのように待つだけではなく、“攻める店舗”を育成していきます」
「現在、顧客や店舗の情報を繋ぐネットワークを開発しており、将来的にはD-ガード全店をシステムに参加させる計画です。店舗で車両ナンバーや購入履歴を入力し、これが店舗の管理システムと繋がり、そして会員管理や販売状況、在庫管理と連動させます。
その上で我々はデータを吸い上げて顧客の分類をしていきます。例えばリピーターが多いのか、新規顧客はどの程度なのか。またどの地区からの来店が多いのか、など分析を行い、これによって様々な指導を行うことが可能となります。例えば、顧客が少ないエリアに集中的にチラシを配布するといったことですね。さらにこれを微信とも連動させ、店舗予約や交換時期のアラートなどを行うことで、あらゆる角度から攻める店舗へ発展していくことが可能となります」
「システム構築と併せて店舗の標準化にも注力していきます。しっかりとしたマニュアルを作成し、我々のスーパーバイザー(SV)が指導を徹底していきます。こうした取り組みにより各店舗は販売チャンスの拡大が見込まれますし、店舗オーナーは指導に基づいた運営ができ、確実な販売増と利益増が期待できます」