更生タイヤ(リトレッドタイヤ)を軸としたビジネスが活発化している。リトレッドは経費削減や環境意識の高まりから徐々にユーザーへ浸透してきたものの、普及率が5割を超えるとされる欧米と比べると、国内では2割と低い水準に留まる。だが、それは新たな需要を掘り起こし、ビジネス拡大に繋がっていくチャンスがまだ残されているとも言える。こうした環境下において、ブリヂストンはタイヤとメンテナンスをパッケージにしたビジネスをこれまで以上に強く訴求している。横浜ゴムは大幅な改革を遂行して巻き返しを図っているさなかだ。一方、日本ミシュランタイヤは自主系タイヤディーラーとの協力関係を強化することで着実に実績を積み上げていく。近年、事業強化の動きを強めている3社にスポットを当てた。
国内におけるリトレッドタイヤにはつい10数年前までネガティブなイメージがつきまとっていた。首都圏にあるタイヤ販売店の社長は、「昔の更生タイヤは品質にバラつきがあり、パンクしやすく壊れやすかったのは事実。だが品質向上に伴い、数年前から顧客の関心が高まってきた。従来のイメージが少しづつ変わってきたのではないか」と話す。
近年は省資源やタイヤ経費低減を求める輸送事業者にとって、リトレッドは必須のアイテムになりつつある。またメーカーにとっても「新品タイヤを売るためのリトレッド」から「新品と合わせてトータルで提供するもの」へと、その重要性が年々増してきている。
今後、各社が推奨している自社台方式が主流になっていけば、使用履歴が明確で良質な台タイヤの安定確保、ユーザーの長期にわたる囲い込みに繋がるといったメリットも生まれてくる。
リトレッドタイヤの業界団体、更生タイヤ全国協議会が毎年実施している調査によると、2014年1年間の更生タイヤ生産・出荷本数は前年比2%増の141万9000本、このうち構成比の約9割を占めるトラック・バス用は127万8000本と10年連続で前年を上回った。
国内のトラック・バス用の更生タイヤ比率はこの数年間、2割前後で推移しているが、ニーズの高まりから徐々に拡大していくことは確実視されている。新品タイヤの販売本数そのものは大きく変動しない中、リトレッドの販売本数は増加が続いていく。それに伴い更生比率は2020年頃に3割程度まで引き上げられるという見方もある。
リトレッド市場における国内シェアは、ブリヂストン、住友ゴム工業、東洋ゴム工業の3社で全体の8割強を占めると推測されている。それに続くのが横浜ゴム。さらにその下にはミシュランをはじめ、複数の独立系、中小事業者がひしめく。
ブリヂストンがライバルを圧倒する拠点網を活かし地位固めを進める中、横浜ゴムは生産増強や販売・物流体制の整備を図り、上位を急速に追い上げる。日本ミシュランタイヤは自前の販売ネットワークを持たない分、販売店と互いに連携した独自の戦略を打ち出す。
各社がさらなるユーザー獲得へ向けて事業展開を加速する中、近い将来、勢力図やビジネスモデルはどう変化していくのか――。成熟市場、日本に残された“最後のマーケット”とも言われるリトレッド市場を巡り、競争は一層激しさを増していきそうだ。