ブリヂストン 圧倒的な拠点数を強みに
ブリヂストンは6月下旬、大阪府にある生産財の直営店とリトレッド工場の見学会を開催し、同社が運送会社などへ提案しているソリューションビジネス「エコバリューパック」のメリットや実際に提供しているメンテナンスサービス、さらに工場で推進している品質向上への取り組みの一端を紹介した。
同社が推進しているエコバリューパックは、低燃費タイヤとリトレッドタイヤ、メンテナンスを組み合わせてひとつのパッケージとして提案するビジネス。顧客である輸送事業者にとっては、タイヤの経費削減や環境対応、安全運行といった様々な課題を一度に解決することが期待されている。
エコバリューパックには2つのプランが用意されている。ひとつは「タイヤメンテナンスプラン」で、タイヤ自体は従来と同じく単品で購入し、メンテナンスのみをブリヂストンが請け負うというもの。
もう一方は「トータルパッケージプラン」(TPP)。このプランではタイヤの所有権もブリヂストン側にあるのが特徴だ。タイヤに関するあらゆる業務を同社が受託する、いわばリース契約のようなもので、車両の使用条件に合わせて細かくメニューを決めていく。主に100台以上の車両を保有する事業者をターゲットに、この数年提案活動を強化している。
現時点でエコバリューパックの契約台数は全国6200社・13万台、このうちTPPでの契約は約1万台。まだ数自体は多くはないものの、大幅な経費削減に繋がるケースもあることから契約件数はこの数年で倍増しているという。
TPPを進めていく上で軸となるのが、日常のメンテナンス作業だ。 エコバリューパックで提供している内圧管理やローテーション、定期点検、トルク管理といったメンテナンスを確実に実施することにより、「9割近くがリトレッドまで持っていけるのでは」(同社)と見込んでいる。適切なメンテナンスを実施することがコスト面だけではなく、台タイヤの回収率向上や安全運行、最終的にはユーザーの利益に繋がっていく。
こうしたサービスを提供できるのは直営店だけでも168店舗ある。そのうちの一つ「タイヤサービス茨木店」(大阪府茨木市)を訪問した。
同店は全国の直営店の中でTB用タイヤの販売本数で25位、コールド式リトレッドの販売は8位という高い実績を誇る旗艦店。現在、顧客の約6割にあたる78社・1866台がエコバリューパックを契約しているという。そのうちTPPの契約数は6社・128台。
ブリヂストンタイヤジャパン生産財カンパニーの植戸玲次氏は、「タイヤのローテーションなどを行わず走っている車を見かけるが、お客様の安全を確保するため、我々のメンテナンスサービスを訴求し、新規ユーザー獲得に繋げていきたい」と意欲を示す。
ライバルメーカーもここ数年、リトレッドを中心としたビジネスを積極化する中、「我々の強みは豊富な拠点数」(植戸氏)。全国約1000拠点の販売ネットワーク、13のリトレッド工場を有する同社が、TPPを軸にさらなる顧客獲得へ攻勢をかける。
徹底した検査で品質向上 タイヤリサイクルセンター大阪
エコバリューパックを進める上で、供給面で重要な役割を果たすのがリトレッド工場。2013年7月に開設した「タイヤリサイクルセンター大阪」(大阪市住之江区)は、国内で初めてリトレッド工場と廃タイヤ中間処理工場を1カ所に集約することにより、顧客の使用済みタイヤの全量リユースまたはリサイクルに取り組んでいる。
敷地面積は7100平方メートル、従業員数はリトレッド工場が20名、中間処理工場が13名。両工場とも1直勤務で年間250日稼働している。
バンダグ方式を採用した工場には加硫缶を3本設置しており、生産能力は月産2640本、年間では3万1680本。ここでリトレッド加工された製品は近畿地区の2府3県へ供給されている。
古谷徳美センター長は「新品工場とは異なり一度使用したタイヤは1本1本の顔が違う。それを検査して新たに製品にするには非常に高い技術が求められる」と話す。実際、大きく分けて11の工程があるうち、4つが検査に関わる工程となっている。台タイヤの受け入れ時から加硫が終わった後の耐圧検査まで、トレーニングを積んだスタッフの厳しい目、最新鋭の機械を用いて入念なテストを繰り返す。
ブリヂストンが推奨する“最適なソリューション”が円滑に進み、ユーザーがより多くのメリットを享受できるよう、同センターでは今後も品質レベルの維持・向上を追求していく。