日本ミシュランタイヤの「3R」普及から定着へ
日本ミシュランタイヤが推奨する「3R」。リトレッドが今ほど脚光を浴びる以前からタイヤの経費削減、環境負荷低減に貢献するソリューションとして展開してきた。今後さらなる普及、そして定着へ向けて、重要となってくるのはタイヤ販売店との連携にある。7月1日、同社が愛知県のタイヤディーラー、(株)中部タイヤセンターで開催したプレスセミナーから3Rの未来像を探った。
日本ミシュランタイヤトラック/バスタイヤ事業部の石井ミオリトレッドマーケティングマネージャーは、「3Rによって、コストの削減や環境負荷低減といった物流業界の課題を解決することができる」と力を込める。
3Rとは、ライフ性能に優れたミシュランの新品タイヤを活用してタイヤ経費を削減(リデュース)し、摩耗した段階でリグルーブによってタイヤ寿命を伸ばし(リユース)、さらにリトレッドによりケーシングを再利用(リサイクル)するというのが一連の流れ。これにより走行コストを削減するとともに、省資源化、CO2削減といった環境負荷低減を実現していくのがコンセプトとなる。
同社のシミュレーションでは、新品タイヤを1回のみ使用して廃棄してしまう場合と比較して、3Rを活用することでコストを約2割抑え、約4割もの原材料使用量削減が可能だという。さらにタイヤの使用本数が減少することに伴い、交換などメンテナンス経費の削減もユーザーメリットとして期待できる。
元々ミシュランのリトレッドタイヤは市場からの信頼性が高く、出荷本数は右肩上がりで推移しているようだ。近年では、製造委託先が従来以上の品質向上に取り組んだ効果もあり、業界全体の伸びを上回る勢いで成長している。
一方、多くのメリットがあるにもかかわらず、普及が進む欧米と比べて国内では3Rはユーザーへ広く浸透しているとはいえないのも事実。その背景には新品の価格下落、イニシャルコスト、そして「タイヤを最後まで使い切る」ということに対するユーザー側の意識の問題もある。
さらに3Rが完結するには新品使用時から適正なタイヤ管理も求められる。ここで重要となるのはユーザーと直接接する機会の多い全国のタイヤディーラーだ。同事業部の秋田修マーケティングマネージャーが「自前の販売網を持っていない当社がビジネスを進めていくため、根幹となるのは自主系ディーラーとの関係構築」と話すように、3Rの普及に向けて販売店にかかる期待は大きい。
3Rを推進することで、その分、新品タイヤの販売本数は減少する。販売店としてはそこをどうカバーするのか――「やはりサービス力になる」と話すのは、ミシュランの3Rをユーザーへ積極的に提案することで着実に成果を上げているタイヤディーラーの一つ、中部タイヤセンターの林鋼司社長だ。
中部地区の物流の窓口として国内トップクラスの貨物取扱量を誇る名古屋港。その一角を占める海部郡飛島村にある同社の西部営業所を訪問した。
専業店の未来を考えると当然に
同社は名古屋市港区にある本社営業所と合わせて合計12台のサービスカーを有し、近隣の海運会社や運送会社へのタイヤ販売・メンテナンスから出張サービスまで幅広く対応する。ミシュランはもちろんのこと、ヨコハマ、ダンロップ、トーヨー、ブリヂストンなど様々なブランドを取り扱い、大型トラック用タイヤが販売構成比の約8割を占めている。
周辺は20分圏内だけで3万台以上の車両、12万本以上のTB用タイヤの需要があると見込まれている。その反面、複数のメーカーが直営店を構えるなど、競争は激化している。こうした環境下、同社では以前からメンテナンスサービスに注力する方針を掲げ、独自のシステムにより顧客の車両の状況、タイヤの預かり状況、在庫を細かく管理し、問い合わせにも即対応できる体制を構築してきた。
「様々なシチュエーションで使用されるタイヤを、それぞれの条件に合わせて提案している中で、当社ではミシュランの3Rを推奨している。タイヤの性能を100%使いきって頂くことが我々の喜びでもある」
当初は「ライフ性能が非常に高く、必ずお客様へのメリットがある」という理由からミシュラン製品の取り扱いを始め、10年ほど前からはリグルーブ、リトレッドを活用したソリューション提案にも精力的に取り組んできた。
林社長は「未来を考えると3Rは当たり前のものになってくる。リグルーブをし、リトレッドへ繋げていくこと。それをもっと広めて世界のスタンダードに合わせていかないと日本は取り残されてしまう」と強い危機感を示す。
その上で、タイヤディーラーの立場からみた3Rのメリットとして、顧客との接点増加や他店との差別化を挙げる。「リグルーブ、リトレッドに至るまで様々なシーンで顧客とコンタクトすることでニーズや課題の発掘、提案力と管理能力をアピールできる。また長期にわたる顧客管理で他店との差別化が可能となる」
ただ、全国的にみて高い実績を誇る同社でもリグルーブの実施率は現状約5%、リトレッドは16%前後に留まり、「3Rまではなかなか到達しない」というのが実情のようだ。それでも「3Rはまだまだ伸びる。リトレッド率を上げ、それに対応するサービス力を向上していくことが専業店の未来に繋がっていく」と、これまで以上に取り組みを強化していく考えだ。
また日本ミシュランタイヤの秋田マネージャーは、「販売店の高いスキルと、我々が提供するパートナーシッププログラムが併せ持って3Rをより良いものにしていきたい」と今後の展望を話す。
将来、日本でも3Rが定着した時、市場環境も大きく変化しているだろう。その時、中部タイヤセンターの取り組みは、さらなる成長を手に入れる一つの解となっているかもしれない。