ブリヂストンは、乗用車用タイヤの新商品「REGNO GR-XⅡ」(レグノ・ジーアール・クロスツー)を2月1日から発売した。新商品はフラッグシップブランドに求められる静粛性や乗り心地などの快適性能を向上しつつ、摩耗時にもその性能を維持することが大きな特徴となる。3月中旬に行われた試乗会でその実力を確認した。
「REGNO」シリーズはブリヂストンの乗用車用タイヤの中でプレミアムゾーンに位置付けられるブランド。新商品「GR-XⅡ」は2015年に発売した「GR-XⅠ」の後継モデルとして4年ぶりのモデルチェンジとなる。その特徴はコンフォート性能を一層向上しつつ、使用が進み摩耗しても性能の劣化を抑制したことだ。
新商品の開発を担当したPSタイヤ開発3部PSタイヤ設計第1ユニットリーダーの杉本香居氏は、「『REGNO』のコア性能である静粛性を引き上げ、それを持続させることが新たな付加価値となる」と話す。
同社の研究では、荒れた路面で発生する“ゴー”“ガー”といった中低周波のロードノイズ、また滑らかな路面での“ヒュー”“シャー”など高周波のパターンノイズ――この2つの周波数が心地良いと感じる音に影響することが分かっている。言い換えれば、その音圧をバランスさせることが上質な車内空間につながる。
今回はロードノイズ抑制のためにベルトの振動を抑え、車内へのノイズの伝達を制限する「ノイズ吸収シートⅡ」を搭載。また、主溝から発生する気柱管共鳴音を低減するために形状を最適化した「ダブルブランチ型消音器」を採用するなどして、静粛性を向上した。従来品と比較して、新品時の騒音エネルギーは5%の低減を達成している。
摩耗時の性能低下をいかに抑制するか
今回のポイントはこの快適さをいかに持続できるかどうかだ。通常、タイヤは摩耗するのに比例してノイズが大きくなるが、杉本氏は「高周波音の悪化を改善するということに着目した」と説明する。摩耗初期から末期まで様々なタイヤをテストしたところ、摩耗中期に“シャー”という音、つまり高周波音が悪化していることが判明した。
それに対応するために導き出した答えは、消音器の形状をいかに維持するか――摩耗の推移に応じて形状が変化する消音器を新たに設計したことで、高周波音を継続的に抑制することが可能となった。同社の試験では60%まで摩耗した時点での騒音エネルギーは17%もの低減を図っている。
「REGNO GR-XⅡ」は静粛性を向上しただけではなく乗り心地や運動性能の両立を図ったことも注目される点だ。形状やパターンを改良することにより、突起などを乗り越える際の衝撃を低減した。加えて新たなコンパウンドを採用し、転がり抵抗を低減しつつ、ウェットやライフなどトータルでの性能向上を達成した。
実感できるコンフォート性能と操縦安定性
今回の試乗会場は埼玉スタジアム2002。まずはその静粛性を確かめるために新商品の新品タイヤと、60%まで摩耗した状態の新商品・従来品をクラウンハイブリッドに装着して比較した。コースは外部からの音を遮断した状態で試乗を行うことができるスタジアム内のペデストリアンデッキ。
同一条件で3つのパターンで走行してみると、従来品の摩耗タイヤでは多少気になったノイズが新商品「REGNO GR―XⅡ」では確かに抑えられていることが実感できる。さらに驚いたのは新商品の場合、新品時でも摩耗時でもその差がほとんど分からないレベルまで仕上がっていた点だ。
また、駐車場内ではスラロームやS字コースでその運動性能を、ロープやゴム片を配置した路面を通過することで段差を乗り上げる際のインパクトを体感してみた。
比較対象は「ECOPIA NH100C」。同社がユーザーに推奨する「ちゃんと買い」で基準となるモデルだ。
「REGNO GR-XⅡ」のハンドリングは想像していたより軽快に走ってくれる印象で、段差のショックも抑えられており、スッと乗り越えていく。そして、タイヤの静かさはこのようなシーンでも確かに感じることができる。
新商品は14~20インチの全68サイズをラインアップし、高級車ユーザー以外にコンパクトカーやミニバンなどもターゲットに据える。各社の開発競争が激しいプレミアムカテゴリーの中で「REGNO GR-XⅡ」が目指した全方向の進化はどれだけ多くのファンを掴んでいけるか、注目だ。
従来品の更に上を目指す
試乗会に参加したPSタイヤ開発3部PSタイヤ設計第1ユニットリーダーの杉本香居氏に開発のポイントを聞いた。
――新商品の開発で苦労した点は。
「今回多くの新技術を搭載したが、新たな技術を足すごとに難易度が上がっていった。今まではこの技術に対してはこの確認をしていけば大丈夫だと思っていたが、想定外のことが起きて、評価のやり直しや設計の見直しが必要だった」
――競合品の中には静粛性のためにスポンジを採用するなどしている。
「スポンジ技術はタイヤ内部の空気の振動(空洞共鳴音)に対して有効だと思うが、そこに特化すると逆にその周辺の音が目立ってしまうことがある。
当社は空洞共鳴音を抑制するために形状などの技術でバランスを取っている。ただ、スポンジではなくても何らかの素材を採用する可能性は検討している」
――今後の「REGNO」としての開発の方向は。
「静粛性や乗り心地といった快適性能に関しては絶対に引き上げていきたい。また今後、メジャーになっていくと思われる電気自動車(EV)などに求められる乗り心地や静粛性は何だろうかと着目する必要がある。EVは車重が重いため、その重さに耐えられるよう接地面の変動が少ない技術などで、更に改良していけると思っている。
開発の時は『レグノ』がライバルだといつも考えている。いかに前モデルの性能を超えていくかを意識している」