住友ゴム工業は6月1日、ミニバン専用の低燃費タイヤ「エナセーブ RV505」を発売する。それに合わせ、4月中旬に同社の岡山テストコース(美作市)および周辺一般道で試走会を開催。DUNLOP(ダンロップ)がブランドメッセージ「事故のない毎日をつくりたい。」を掲げてから最初に発表した乗用車用タイヤの性能を確かめた。
ふらつき抑え、耐偏摩耗や静粛性も向上
住友ゴム工業は、「エナセーブ RV505」を“風や重さにふんばりが効く ふらつきにくく快適なミニバン専用タイヤ”として発売する。
ふらつきの抑制に寄与するのは新開発の「FUNBARI TECHNOLOGY(ふんばりテクノロジー)」だ。非対称パターンなど“路面をしっかりと捉える技術”と、タイヤ構造の最適化といった“荷重をがっちり支える技術”を組み合わせ、耐ふらつき性能は従来品(エナセーブ RV504)と比較して19%向上した。
トレッドには、タイヤ幅205以下は3リブ、215以上は4リブの非対称の新パターンを搭載。従来品よりリブ数を減らしてショルダー部のパターン剛性を高めつつ、シミュレーション解析を活用して接地面全体の剛性を最適化した。
また、リブのアウト側壁面には小さな出っ張り「プラスリブ」を設けた。通常路面と接していないこの突起は、コーナリングなどの荷重負荷が掛かってブロックが倒れこむシーンで接地面を確保する。新パターンやプラスリブなどを投入することで、カーブやレーンチェンジでより安定した走りを実現させた。
さらに、車両の荷重移動をがっちりと支えるためにサイド部を強化。あわせて、サイドウォール全体が均一にたわむ新プロファイルによってタイヤの歪みが小さくなり、多人数の乗車でもふらつきを抑制している。
「ふんばりテクノロジー」はトータルライフの向上にも貢献する。ショルダー部の摩耗エネルギー低減や荷重変動の抑制により、耐偏摩耗性能は53%アップした。
新商品は静粛性にも配慮し、接地形状をラウンド状にした新プロファイルや、新カオスピッチ配列を使ったパターンデザインを採用。これにより、振動を抑制したほか、ブロック配置の最適化でノイズを分散してパターンノイズは34%、ロードノイズは31%低減した。
快適な運転を実現するふんばりを体感
トヨタ「アルファード」を使用して、2種類のコーナーや車線変更を実施できる直線路、ノイズが発生しやすい荒れた路面などを設定したテストコースで試乗を行った。今回は、160kgの積車時に新商品および従来品を装着した場合と、空車時における新商品の計3パターンを体感した。
ハンドルを握って最も違いを感じたのはレーンチェンジの場面だ。従来品だと時速60kmでも車線変更で車が持って行かれるように感じられ、ハンドルの微調整が求められる。だが、新商品は積車時に時速100kmまで速度を上げてもハンドルの操作通りにクッと反応してくれる印象だ。
担当者は「そこまで速度が出ていないような感覚でドライブでき、運転が上手くなったような気分になるのではないか」と話すが、確かにタイヤが異なるだけでこれほど操作感が変わることには驚いた。
助手席でも違いは明らかだ。従来品はレーンチェンジ時にぐらっと車体が動いて余韻が残ってしまうが、新商品はリアタイヤの応答が良いため隣の車線に収まりやすく、動きに“お釣り”がない。
新商品と従来品ではコーナーや荒れた路面の走行にも差が出る。新商品「エナセーブ RV505」は、しっかりとした“ふんばり”が効くためコーナリングでもストレスが少なく、さらに、乗った瞬間に従来品より車内に伝わるノイズが抑えられていることを実感した。
また周辺の一般道では、トヨタ「ノア」やスズキの軽自動車「スペーシア」のほか、VW「トゥーラン」、ルノー「カングー」に新商品を装着し、試乗を実施した。
ノアやトゥーランは後部座席に座ったが、カーブなどでも車体が大きく揺れることがないため快適に乗車できる。また、ミニバン専用タイヤだからといって硬すぎる設計にはなっていないため、路面からの突き上げも気にならないレベルに仕上がっていた。
実際に運転してみても、ハイト系ワゴンや輸入車など車両のタイプに関係せず、ワインディングでも思い通りの操縦が可能だ。同じミニバンでもタイヤが異なると走りも大きく変わる――ファミリーユースが多いミニバンだからこそ、タイヤにもこだわりが求められることを確信した。
乗れば分かる、顧客目線の開発を
住友ゴム工業は、「新車のラインアップの中でミニバンの構成比は年々増加している」と分析している。昨年の乗用車販売ランキングをみると、ミニバンは日産「セレナ」、トヨタの「シエンタ」「ヴォクシー」などがトップ10に登場。さらに、軽自動車でもホンダ「N-BOX」やスズキ「スペーシア」などハイト系モデルの人気は高い。
同社によると、ミニバンユーザーの約7割はファミリー層が占めているという。実際ミニバンは車両の背も高く、人や物をたくさん乗せられる点は大きなメリットだ。
だが、積載量が多いときや、橋やトンネル出口で横風の影響を受けると走行中にふらついてしまうこともある。こうした車両の動きはハンドルの定まりづらさにもつながるため、ドライバーの不安要因となり得る。また同社調べでは、交換されたミニバン用タイヤは2台に1台(約47%)が偏摩耗した状態だった。
「エナセーブ RV505」は、これらのミニバンならではポイントに着目した新商品だ。「タイヤの目標性能は顧客目線に立ったものでなければならない」と話す西実副社長は、新商品の開発時には「お客様が乗ったときに『ふらつきが少なくなった』『安全快適に運転できる』と思って頂けることを目指した」と語る。
その上で「今までのタイヤ開発は現行品を少しずつ改良していくことだった。ただ今回は普通の進化ではなく、ミニバン専用タイヤに求められるニーズを徹底的に追求した」と、“乗れば分かる”優れた性能に自信を示していた。