昨年から超大型ラジアルを生産
古くから観光地として有名な尾道。市中心部からしまなみ海道(西瀬戸自動車道)を越え、車で10分ほど走ると工場が立ち並ぶ地域が現れてくる。その中で入り口にひときわ目立つ巨大なOR(鉱山用・建設用)タイヤが展示されているのが横浜ゴムの尾道工場だ。
同工場は1974年の操業開始以来、2011年までに3期の工場拡張を行っており、2011年の月産生産能力は2006年と比較して1.5倍の1700トンまで拡大している。現在の生産能力は1750トン、本数に換算すると月産9000本レベルとなっている。敷地面積は19万3000平方メートル、建屋面積は5万7000平方メートル、従業員数は405名。
主要商品はダンプトラック用、グレーダー用、ホイールクレーン用、ホイールローダー用、産業車両用の各種タイヤと多岐にわたり、1998年からはラジアルタイヤの生産をスタートした。また2013年6月には、より高度な技術が要求される49インチクラスの超大型ラジアルタイヤの本格製造も開始している。現在の生産サイズはバイアスが20~57インチ、ラジアルが24~49インチ。
なお、OR市場全体ではラジアルの構成比率がバイアスを上回っているが、同工場の場合はバイアスが約7割を占める。出荷先は約8割が海外向けで、神戸港から各国へ輸出している。
工場の設備として特徴的なもののひとつに加硫機が挙げられる。大型サイズになると加硫時間は12時間にも及ぶが、2種類の機械を使い分けて効率的な生産を行っている。ひとつは通常の加硫機で全部で34台ある。それに加えて半球型の特殊な機械を8台設置しており、大型サイズを含む複数のタイヤを一度に加硫することが可能だ。
ORタイヤは世界的な資源開発の活発化に伴い、2000年代半ばから需要が急増していたが、ここにきて低迷が続いている。同工場でも「大きなバイアスのオーダーが少なくなっており、大型ダンプに使用されるものは昨年に比べて3分の1位まで落ちている」(前田松太郎工場長)。
こうした状況下、「サイズの拡大や新しいパターンの開発といったここでしか作れないものを作っていきたい」と今後の展望を話す。現在は開発部門の設計者らが直接工場に来て共同で開発を進めるなどの動きもあるようだ。
工場では品質管理と安全管理に注力している。品質面ではタイヤ1本ごとに“トラベルカード”と呼ばれる管理票を添付し、使用した機械など工程のあらゆる部分を管理するシステムを採り入れた。これにより「いつ、誰が、どの部材を、どのマシンで作業したか」といった作業の履歴を正確に把握することができる。
ORタイヤは大型サイズだと3.5トンもの重量があるため、オペレーターの安全管理は非常に重要だ。それに対応すべく尾道工場では労働安全衛生をシステムとして管理していくために「OSHMS(労働安全衛生マネジメントシステム)」を導入し、2012年1月に認証を取得した。
さらに工場として“安全文化”を構築していくために今年から新たな取り組みをスタートさせた。これは「公開作業観察」や「相互忠告運動」と呼んでいるもので、他者からの客観的な意見をもとに作業を確認していく活動のこと。従業員同士が意見を出し合う中で、互いの作業方法を確認し、作業品質の維持・向上が期待されている。
前田工場長は今後の課題として「技術の伝承を含めた後継者の育成」を挙げる。同工場は、今後3、4年の間に操業開始時に入社した従業員が定年のピークを迎えるため、人材育成は急務となっている。
「職人芸のように人間が作業する部分が多いので、そこには経験や知識が必要になってくる。機械の自動化も行っているが、全て自動にはならない。やはり人づくりが重要」
これまで40年間の年月で培ってきた技術を次世代に継承するため、今後も人材教育をはじめとした各種取り組みを強化していく。
40周年迎え、さらなる発展を
横浜ゴムの尾道工場は11月1日、1974年の操業開始から40年を迎えたのを記念して「40周年記念祭」を開催し、工場従業員とその家族など約600名が参加した。
式典には同社から後藤祐次取締役専務執行役員、尾道工場の前田工場長らが出席。冒頭、挨拶に立った後藤専務は次のように話した。
「尾道工場は横浜ゴム唯一のORタイヤ工場として、国内外の産業を支えるタイヤを製造している。ORの製造技術を持つタイヤメーカーは世界でも数少なく、それを生産できる工場を持っていることは誇りである。その尾道工場が今年40周年を迎えられたのは、地元の皆さまのご支援の賜物と深く感謝している。50周年、100周年に向けての新たなスタートの日であり、ますます尾道工場が発展するよう頑張っていきたい」
続いて来賓を代表して尾道市の平谷祐宏市長は、「尾道工場は創業以来、地域経済発展のために長期にわたり大きな役割を果たしてきた。工場内にある公園の開放や生物多様性保全活動など、その取り組みに対し深く感謝している」と祝辞を述べた。