オートバックス 店舗特性に合わせてタイヤ選びに独自性

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カテゴリー: ディーラー, レポート

A PIT AUTOBACS SHINONOME

 大手カー用品店「オートバックス」をはじめ、様々なストアブランドを展開しているオートバックスセブン。売り場面積が300坪以上の「スーパーオートバックス」や中古カー用品店など、今年3月時点の国内店舗数は597にのぼる。その中から、昨年11月にリニューアルオープンした「A PIT AUTOBACS SHINONOME」(ア・ピット・オートバックス東雲)や首都圏のスーパーオートバックスを訪れ、「タイヤ販売」を中心にそれぞれの特徴と取り組みを取材した。

オートバックス木更津金田店
オートバックス木更津金田店

 カー用品店にとってタイヤは主力商品のひとつ。年間の収益に大きく関わってくる、いわば販売の“要”だ。そうした意識は売り場づくりにも反映されている。

 オートバックス木更津金田店の入り口前に、赤字で強調された値札が一際目を引く特価タイヤコーナー。平積みで100本以上はあるが、1週間後には全て回転するほどサイクルが早い。ミニバン専用タイヤの前に置かれた販促品は性能比較が体感できるためユーザーの納得につながり、単価の向上にも貢献する。

スーパーオートバックスかわさき
「スーパーオートバックスかわさき」のタイヤ売り場

 一方、スーパーオートバックスかわさきでは「消費増税前の今がチャンス夏のタイヤ大還元祭」と銘打ったコーナーをレジ横で大々的に訴求。タイヤメーカーの出荷価格改定に伴う値上げも告知する。

 オートバックスはフランチャイズ加盟店がほとんどで、法人ごとにある程度の裁量権を持っている。そのため、商品ラインアップや開催イベントの企画は、各店舗の客層や周辺地域に多い保有車種といったエリア特性に合わせて独自性を発揮することができる。
 
 こうした中、新しいスタイルで挑戦するのが「A PIT AUTOBACS SHINONOME」だ。同店舗はスーパーオートバックスとして営業していたが、昨年11月にリニューアルオープンした。

 1階がピット作業スペース、2階と3階に商品が並ぶ。TSUTAYAとスターバックスが併設されており、キッズスペースも隣接している。来店客は、ほかのオートバックス店舗と比較すると若年層の割合が高く、また、ハイエンド志向のユーザーも多いという。

 従来の店舗と大きく異なるのは、タイヤ・オイル・バッテリー類の販売や各種メンテナンスの受付を行う「サービスフロント」と、その他の商品を取り扱う建物が分かれていることだ。

「A PIT AUTOBACS SHINONOME」
「A PIT AUTOBACS SHINONOME」

 商品の訴求方法もユニークだ。サービスフロントでは、タイヤが一種一本ずつトレッドを正面にして陳列されており、商品名と端的な説明のみをキャプションに表記する。

 あえて価格を前面に出さない理由は、値段からアプローチせず「タイヤの性能や自分に合ったタイヤはどれか」という点に着目してもらうためだ。

 さらに、タイヤの前にはゆっくりと商談ができる椅子とテーブルが並んでおり、ユーザーのニーズをヒアリングしながら商品提案を行える。メンテナンスに訪れたドライバーが、ピットにあるクルマの作業状況を着席したままスマートフォンで確認できるサービスもこうした環境が整った同店舗だけが実施している。

 オープン当初は、従来のタイヤコーナーをイメージして来店したユーザーから「タイヤがない」「オートバックスという感じがしない」といった声もあった。だが、慣れてしまえばまずサービスフロントに向かえば良いのでユーザーにもメリットがある。

「A PIT AUTOBACS SHINONOME」のタイヤ売り場
「A PIT AUTOBACS SHINONOME」のタイヤ売り場

 この店舗のもうひとつの特徴が2階のライフ&カーショップエリア。オートバックスやスーパーオートバックスではカー用品を「洗車用品」や「便利・快適に」など、用途ごとに分けて売り場を構成している。

 これに対して「A PIT AUTOBACS SHINONOME」は、店内中央の書籍・雑貨類コーナーでテーマ別にライフスタイルを提案し、店内壁側に同じテーマに沿ったカー用品が並ぶ。例えば「旅とクルマ」というセクションでは、中央部でインスタントカメラを、壁側では長距離ドライブの便利グッズを紹介するといった形だ。

 新たな切り口に対するユーザーの反応は様々だった。同店舗はリニューアル直後、標準的な商品を取り扱うオートバックスをベースにアイテムを揃えた。そのため、建て直す前のように幅広い商品ラインアップを期待していた車好きのユーザーの中には物足りなさを感じる顧客もいるという。

 そうしたユーザーが再び店を訪れる機会となるよう、カーイベントを企画。同時に新たな客層も開拓し、全体の来店客数の増加を図った。

 進化する車両技術やそれに伴う安全への意識の変化、多様化する消費者ニーズと向き合いながら各店舗を築き上げてきたオートバックスセブン。トライ&エラーを繰り返し、さらなる高みを目指す。


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