タイヤ・ホイール見本市「中国国際タイヤエキスポ(CITEXPO)2019」が8月19~21日の3日間、上海・世博展覧館で開催された。17回目となった今回は現地メーカーを中心に360以上の出展者が新製品や主力商品を紹介するとともに、世界各国から集ったバイヤー達と意見交換をした。日本へのビジネス展開や、米中貿易摩擦への対策などを有力タイヤメーカーに聞いた。
中策ゴムグループ(ZHONGCE RUBBER GROUP)
中国国内最大手のタイヤメーカーである同社は欧州、カナダ、米国で需要のあるスタッドレスタイヤをメインに訴求した。
担当者は「上半期は国内外ともに売上高は増加したが、国外と比べると国内の伸び率はわずかだった。米中貿易摩擦や国内での経済の減速が影響している」と話した。
日本でも売上高が10%以上増加しているが、さらなる成長を目指し市販用タイヤの新規顧客を開拓するほか、宣伝活動を通して認知度向上を図っていくという。
トライアングル(TRIANGLE TYRE)
同社は中国国内の4つの工場で、乗用車用タイヤやトラック・バス用タイヤ、OTRを生産している。
アフリカやアジアのほか米国でマーケットシェアを確立し、2017年に国外初のタイヤ工場を米ノースカロライナ州に建設すると発表した。だが、米中貿易摩擦の影響により、現在は計画を中断しているという。
一方、担当者は「日本の代理店とは長年にわたって良い関係性が築けており、それが良い結果となって表れている」と話した。
ダブルスター(QINGDAO DOUBLESTAR TIRE INDUSTRIAL)
同社は2014年から現地工場のリフォームにより、生産効率を80%向上、不良品率を80%減少させた。昨年7月には韓国のクムホタイヤの株式を45%取得し、筆頭株主となった。
担当者は「上半期は良い成績だった」と振り返り、その理由を次のように説明した。「米中貿易摩擦を背景に、中国政府らが主導する『一帯一路』構想の支援を受けられる中東とロシアに注力した。さらに、ロシア市場での冬タイヤの販売が好調に推移した」
会場では欧州や中東、アルジェリアで需要の高いウルトラ・ハイ・パフォーマンスタイヤをメインにラインアップした。
ワンダ(SHANDONG WANDA BOTO TYRE)
中国屈指のWANDAグループが2004年に開始したタイヤビジネス。工場の生産能力はトラック・バス用タイヤが年産300万本、乗用車用タイヤが1500万本、OTR用タイヤが10万本で、R&Dセンターも有する。
製品は約160カ国に出荷し、米国、欧州、オーストラリアをメイン市場としている。また、中国国内トップ3のタイヤブランドにOEM生産で年間200万本を提供した実績もあるという。
担当者は「日本市場にも興味はあるが、代理店がまだ見つかっていない。特に市販用タイヤビジネスを広げていきたい」と語った。
ワンリ(WANLI TIRE)
オールシーズンタイヤ「ALL SEASON versat SC501」やスポーツシリーズの「SPORTmacro SA603」といった新商品を中心にラインアップした。
中国に2つあるタイヤ工場の生産能力は合計で年産1700万本、そのうちトラック・バス用タイヤが200万本。国外では欧州の販売数量が最も多く、日本では年間約50万本の乗用車用タイヤを販売している。
担当者は「中国の製品は日本市場での展開は厳しい」と話す。その上で、「当社は日本のD1のスポンサーにもなっており、当社の製品を使用された方には既に品質を知って頂いていると思う」と自信を示した。
ウィンラン(WINRUN TYRE)
WANLI TIREのタイヤブランド。2008年に日本へ進出し、現在はイエローハットで販売を行っている。ブースでは、欧州で人気の高いランフラットタイヤ「R330」を中心に展示した。
担当者は「日本でユーザー向けの広告を通してブランディングを図りたい。現在の販売数量は20~25万本だが、40万本を目指している」と意気込みを語った。
エバーグリーン(EVERGREEN TIRE)
同社は中国以外にも、中南米や欧州を含む5つの地域で営業を行っている。海外の販売数量は年間およそ150万本、そのうち半数以上を欧州が占める。北米は米中貿易摩擦の影響を受けて、販売活動を一時的に停止しているという。
担当者は「今後はサウジアラビアにも注力したい。年末までの販売数量は10万本を目指している」と話す。
会場では、ウェット・ドライ路面で低転がり抵抗を発揮する「DYNA COMFORT EH226」など多数の商品をラインアップした。
東営市方興ゴム(DONGYING FANGXING RUBBER)
同社は中国市場でのラグジュアリーカー向け市販用タイヤを軸に、海外では欧州や東南アジアといった地域で乗用車用タイヤやトラック・バス用タイヤを販売する。
3つの工場のうち、トラック・バス用タイヤ工場と乗用車用タイヤ工場は、フランスやイタリア、日本などから導入した機材によってオートマチック化されており、1分間に2本のタイヤを生産できる。
担当者は「検品も機械で行われる。自動化を進めたのは、省人化というよりもユニフォミティの精度を高めるためだ」と狙いを話していた。
江蘇通用科技(JIANGSU GENERAL SCIENCE TECHNOLOGY)
中国国内にタイヤ工場を有する同社は、乗用車用タイヤやトラック・バス用タイヤ、OTR用タイヤなどの製造販売を行っている。
ブースでは、農業機械用タイヤ「TF605」や、高速走行時にも高いグリップ力とハンドリング性能を発揮するトラック・バス用タイヤ「HR226」を含む商品を展示した。
中国市場をメインにビジネスを展開しているが、日本市場への進出も視野に入れており、代理店を検討中だ。
現在、タイにトラック・バス用タイヤと乗用車用タイヤの工場を建設中で、年末までには第1期が完了する予定。
ライダンズ(RYDANZ)
D1のスポンサーとして実績を持つ同社は今年販売を開始した「REVIMAX RF300」をはじめ「REVIMAX R33」や「REVIMAX R03S」といったレース用タイヤを中心に訴求した。
現在、工場の生産能力は年産400万本で、タイヤ販売の6割以上が東南アジアや中南米、中東、アフリカといった海外マーケットが占めるという。
担当者は「高付加価値のある商品を開発している。競争力のある商品を開発しながら、既存商品の生産能力を向上させようと計画している」と語った。
アイリス(IRIS TYRES)
同社は、アルジェリアで15年以上の歴史を持つIRISグループに属しており、今年6月に同国のタイヤメーカーでは初となるタイヤ工場の生産を開始し、7月から国内で販売している。
現在の生産能力は乗用車用タイヤが年産200万本で、来年には450万本となる見込み。フィンランドとドイツのタイヤメーカーから技術提供を受けた。
担当者は「60~70%はアルジェリア国内で販売し、30~40%を欧州などの海外向けに輸出したい」と展望を語った。
会場では左右非対称で低転がり抵抗が特徴の「Ecoris」やツーリングタイヤ「Sefar」などを紹介した。