タイヤから始まる“満足の輪”を作る
大阪府タイヤ商工協同組合で長年にわたり要職を務め、地域業界の活性化に力を尽くしてきた永田弘さん。株式会社石吉タイヤ(大阪市鶴見区)の創業者で、現会長である。ことし満50周年という大きな節目を迎えた。それを記念し、2月には創業50周年記念祝賀会を開き盛大に祝った。2代目社長の永田順一さんは「創業100周年という次の50年に向けての歩みを始めたばかり。地域のすべてのお客様にとってなくてはならない店となるよう努めていく」と、さらにその先を見据えている。
永田弘会長が石吉タイヤを興したのは1966年2月。以来、地域との結び付きを強めながら、50年もの間、タイヤ販売を展開し、事業を成長させてきた。もっとも身近に見てきた永田順一社長の目には、その姿はどのように映っていたのだろうか。
「当社の基本理念は『三方善し』。社員・家族が幸せであること、お客様が満足されていること、協力会社様が繁栄されていること――この3つについてバランスをとりながら、ずっと実践してきた結果だと思います」、これまでをこのように分析する。
現在は鶴見店、深江店、東大阪店と、グループ会社である有限会社イシキチが運営するタイヤ館花博鶴見店、これら4店舗をネットワークとして結んでいる。
その中から、今回は深江店を訪れた。所在地は大阪市東成区東今里。市内の幹線道路である内環状線にほど近い。閑静な住宅街の一画にある。その周辺には古くからの戸建てと新しい集合住宅とが入り交じる。また近隣には大型ショッピングモールをはじめ、生活に密着した地域の商店が建ち並ぶ。
そんな場所でこの深江店は長い間、タイヤ販売・整備作業に携わり、地域密着の店として強い存在感を放ってきている。
「無理な事業拡大、無理な拡販というのは必要ない。われわれがタイヤ屋として本来すべきことを、お客様にきちんとお伝えすることができる集団にならなければいけない」(永田社長)という考え方のもとで、商売を行ってきている。
「どうしたらお客様にご満足していただけるか――石吉タイヤのベースはそこにあります。人との付き合いで大事なのは相手を思い遣ること。お客様に対しては特にそれが重要。安く、たくさん売ることも大事だろうし、それを否定することはしません。しかし、『自分たちのことをここまで考え親身になってやってくれる店は他にないから、石吉タイヤがなくなったら困る』と言われる会社になりたいと思っています」、永田社長は日頃の取り組みをこのように話す。
「店舗商圏、半径1km以内のシェア100%の実現」を経営ビジョンとして標榜しているという。だが、現実はそれにはまだ遠い。だからやるべきことはたくさんあると、永田社長は意欲的だ。
では、今後のテーマとは何だろうか。「当社の代表になってまだ4年ほどだが、今から次の社長を育成しなければならない。それが早急なテーマ」。創業100年に向け会社を存続させるには、永田家の血をひいていない人でも運営できる態勢をつくっていかなくてはならないというのが、永田社長の考えだ。それには人材育成が何よりも鍵を握る。
「この会社が存続することで、社会に何を提供できるのか、そういうことを理解することができる人、スタッフや仕事等のマネジメントができる、そんなオールラウンドプレイヤーをつくっていかなくてはなりません」。
その速度をより速めるために、ことしからは全店舗の幹部スタッフを集めての全体研修を永田社長自らが行うようにし始めた。そこには次の世代の人たちに、いろいろなことを直接伝えたいという考えが根底にある。
「タイヤから始まる“満足の輪”づくり」――石吉タイヤのこの経営理念を、50年先にも伝えるために。