1954年に創業したサカモト(静岡県掛川市)は、県道415号線沿いで「タイヤガーデン掛川」を運営している。同社がモットーとするのは、「お客様のニーズにお応えできること、サカモトにしかできないタイヤサービスのご提供」だ。同社ではどのような形でユーザーのニーズに対応しているのか――ショップの店長を務める稲垣勝也さんに、現在の取り組みと将来の展望を聞いた。
ニーズに応え、多様なサービスを提供
サカモトは、「タイヤガーデン掛川」で店長を務めている稲垣勝也さんの祖父が創業した。現在、ショップは主に稲垣さんとその両親、従業員の4名で運営されている。
店舗のピットは乗用車4台、トラック1台に対応する。また、サービスカーは2台保有しており、掛川市内を中心に出張でのタイヤの脱着や、東名高速道路でのバーストに起因する作業依頼などにも応えているそうだ。
現在、事業活動のメインとなっているのは生産財向けのサービスだという。だが、運送・物流関係の企業は掛川市に隣接する袋井市に集まっており、店舗の周辺には住宅街が広がる。こうした地域性を背景に、稲垣さんは「乗用車向けのサービスも積極的に展開していきたい」と意気込んでいる。
同社ならではのサービスと言えるのは、乗用車用スタッドレスタイヤのレンタルサービスだ。スタートしたのは10年ほど前。店舗があるエリアでは夏タイヤしか所有していないドライバーも多いが、もし冬場のドライブでスタッドレスタイヤが必要となれば、1泊2日や2泊3日などの日数でも借りることができる。
利用客は周辺地域にとどまらず、東京から高速道路を利用して「タイヤガーデン掛川」に来店し、店舗でタイヤを履き替えてから目的地へ向かうユーザーもいたという。レンタルサービスの人気はかなり高いそうで、冬場には通常定休日の日曜日も開店し、週末の利用に向けて貸し出されたタイヤの返却にも対応するほどだ。
今でも、さらなるサービスの周知を目指し、ショップでは積極的な宣伝活動に努めている。ウェブサイトでの紹介に加え、夏場にはレンタルサービスの広告を印刷したうちわの配布にも取り組んだそうだ。
また、同店でタイヤを購入したユーザーには、通常料金の半額でスタッドレスタイヤを借りられるサービスも提供。稲垣さんは、「レンタルを軸にして夏タイヤも販売していきたい」と展望を示した。
スタッドレスタイヤのレンタルサービスをはじめ、細かなユーザーニーズに対応する地域密着型の事業展開が「タイヤガーデン掛川」のセールスポイントとなっている。乗用車向けのサービスとしては、レンタル以外に、1シーズンのみレンタルで使用した中古スタッドレスタイヤの販売や、タイヤの処分・買い取りサービスを実施している。
また、近年はスペアタイヤを積んでいない車両が多く、出張パンク修理の依頼も増加傾向にあるという。そのため、「タイヤガーデン掛川」では出先でパンクしてしまったユーザーに対して、同店でのタイヤ購入者を対象とした「出張パンク修理+スペアタイヤの貸し出し」を行っている。
これは、現場でパンクしたタイヤと貸し出し用のスペアタイヤを取り替え、スタッフがパンクしたタイヤを預かるもの。ドライバーは後日、修理が完了した自分のタイヤを店頭で受け取ることができる。
さらに、同じく増加傾向にあるのが持ち込みタイヤの交換だ。稲垣さんは、「どんどん利用者を増やしたい。ネットで『掛川 タイヤ 持ち込み』と検索したとき、トップに表示されるように活動している」と話す。
今後も、好評を得ているスタッドレスタイヤのレンタルを中心に、ユーザーの様々な需要を掘り起こしていく方針だ。また、一般ドライバーに対しても「当店でタイヤを替えた方から電話をいただけば、サービスカーですぐに伺う」といった丁寧なサービスを心がけ、トラック向けに展開されることが多いロードサービスの利便性の高さを一般消費者にもアピールしていく。
現在ショップで注力する取り組みは、ウェブサイトを活用した自社サービスの宣伝だ。たとえば持ち込みタイヤの取り付けを紹介するウェブページには、偏平タイヤやランフラットタイヤの交換作業を映した動画を掲載。ほかにも、「ネットで買ったタイヤ、取り付けします」と題した動画をアップし、あまりタイヤ専業店に馴染みがなかったユーザーにも、ショップで提供しているサービスの訴求を図っている。
また、工賃価格表や「ネットで購入したタイヤの送り先は『タイヤガーデン掛川』でOKです」などのフレーズをウェブサイトに記載することで、ショップに慣れていない消費者でも安心して利用できる体制を整えた。
稲垣さんは、これからも“地域型”の事業展開を進めることが目標だ。「もっと地域に貢献していることをアピールして当店のメリットに気付いてもらい、認められてお客さんを増やしたい」と、将来の抱負を語る。
「タイヤガーデン掛川」では、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)を駆使した情報発信も積極的だ。こうした取り組みが、若者や女性客にとっても気軽に利用できるショップへとつながるのかもしれない。利用者目線に立った活動を展開し、地域に役立つタイヤショップとなるべく、稲垣さんの挑戦は続く。