東洋ゴム ミニバンタイヤの“パイオニア”が生み出す新カテゴリー

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カテゴリー: レポート, 試乗

 東洋ゴム工業は、「TRANPATH」(トランパス)シリーズの新商品として、ミドルクラスミニバン専用タイヤ「トランパスML」を6月1日から発売する。今では各社からラインアップされているミニバン用タイヤだが、その先駆けは1995年に専用ブランドを立ち上げた東洋ゴム。4月下旬、千葉県の袖ヶ浦フォレストウェイで開催した試乗会で、ミニバン用タイヤのパイオニアが生み出した新商品の乗り味を体感した。

ミドルクラスミニバンという新たなセグメント

ミドルクラスミニバン
販売が増えているミドルクラスミニバン

 近年のユーザーニーズの変化や車両のトレンドに合わせて各社がさまざまなタイプの商品開発にしのぎを削る中、東洋ゴム工業が今回、目をつけたのは“ミドルクラスミニバンの上級グレード”だ。

 ミドルクラスミニバンは、2015年の乗用車販売台数ランキングにおいて、上位20位中5車種がランクインするなど安定した人気を誇る。さらに各車両を細かく分析すると、一般グレードより数十万円高い上位グレードやカスタマイズモデルが売れ筋となっている。

 同社では「力強い外装と高級感ある内装を持つミドルクラスミニバンの上級グレードが多くの支持を集めており、このセグメントを一つの新カテゴリーとして捉えた」としている。そうしたゾーンをターゲットに開発を行ったのが新商品「トランパスML」だ。

 新商品のコンセプトは「安定感と低燃費性能を兼ね備えた“驚き”のミドルクラス専用スタイリッシュミニバンタイヤ」。――技術面では20年以上にわたるミニバンタイヤの開発で培ってきた同社の独自技術をより一層進化させた。

 ゴム材料は独自の材料設計基盤技術「ナノバランステクノロジー」を駆使して開発した。同社タイヤ技術本部の川上和紀リーダーによると、「2011年に発表したナノバランステクノロジーは分析・解析・素材設計・加工の4つを横断的に統合したタイヤ技術基盤だが、とくに進化したのは加工技術」と話す。

トレッドには「L」の刻印
トレッドには「L」の刻印

 「すぐに革新的な素材が出てくるわけではないので、同じレシピ(材料)を使ってもいかに性能を引き出すか、この配合技術が開発のカギになっている」

 またトレッドキャップは2種類のアクティブポリマーを採用したほか、トレッドベースには「超低燃費ポリマー」をシリーズで初めて採用した。

 これらの最新技術により、「トランパスML」の転がり抵抗は、2014年に発売した「トランパスmpZ」より8%ほど低減させ、グレーディングはワンランク上の「AA」を達成した。

 一方、パターン設計では「mpZ」の主要な技術を踏襲し、トレッドのワイド化や低溝容積化などにより接地面積を拡大。これにより、ミニバンで起こりがちなフラつきを低減させつつ、摩耗の均一化、ライフ性能の向上を図っている。

 今回は上級グレードのミニバンをターゲットにしていることもあり、タイヤそのもののデザインにもこだわりを見せた。トレッドは、力強い外装を持つミドルクラスミニバンにマッチする鋭角的でシャープなデザインを採用。さらに特殊な加工技術を採用することで、製造段階でスピューの無い外観に仕上げた点も注目だ。

ミニバン特有のフラつきは?

トランパスML
ミニバン専用タイヤならではの安定性

 試乗会では同社のテストドライバーが運転する車両に同乗して、「トランパスML」と乗用車用スタンダードタイヤ「ナノエナジー3プラス」をそれぞれテスト。ドライ路面での直進安定性や高速レーンチェンジ時の乗り心地の違いを体感した。

 性能の進化を最も感じられたのは、コース上に置かれたコーンを目印に時速60km~80kmでレーンチェンジを繰り返した時だ。当然どちらの車両でも車体が大きく振られる。ただ、「ナノエナジー3プラス」では手すりをしっかり握っていないと身体を支えるのが難しい状況だったのに対し、「トランパスML」はGが少なく身体の傾きが少ない。また車両が傾いてからの回復も早い印象で、後部座席や助手席でも安心感が高い。

 また今回は「トランパスML」と「トランパスmpZ」でウェット路面を走行する機会があったが、新商品も「mpZ」同等の高い性能を確保していることを実証した。なお「トランパスML」のウェットグリップ性能は発売全17サイズで「b」を獲得している。

 しっかり感や安全性はもちろんのこと、安全性やライフ性能でも「mpZ」と遜色ないレベルにある「トランパスML」。同社では環境意識が高いユーザーやカッコ良いタイヤを求めるドライバーにも積極的に訴求していく考えだ。

 これまで軽自動車用プレミアムタイヤなど、業界に先駆けて新たなマーケットを創り出してきた東洋ゴム。今回の新商品も“ミドルクラスミニバンの上級グレード”専用といういわば独自商品。その商品コンセプトのようにユーザーに“驚き”を与え、パイオニアとしてどこまで市場を開拓していけるのか、注目だ。


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